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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 54


次の瞬間。啓太が感じたのは、猛烈な嫌な気配と上から降ってくる『何か』であった。
啓太は反射的に防御しようとするが、猛烈な勢いで空間を狭めていく瓦礫を前に、完全防御なんてできるはずもなく。
結局彼はルシフェルの意図通り、瓦礫の下敷きとなったのであった。
死んでもおかしくない状況で大ケガだけで済んだのは、日頃の訓練と運の賜物と言わざるを得ないだろう。
合掌。
ルシフェルが冷然と見つめる前で怪人達は、必死に啓太を救出しようと瓦礫を掘り返している。
中でもマジカル・バニーは真っ青になっていた。
啓太の防御機構の構造上の弱点は技術責任者として最もよく理解しており、改良案を練って設計を纏めて改装手術の準備を整えており、あとは計画書を提出して啓太や最高幹部たちの意見を聞いて裁可が出れば即手術できるところまで来た矢先にアパレント・アトムはルシフェルと遭遇したのだ。
自分が1日早く計画書を提出していればと、自責の念にかられながら必死に瓦礫を取り除こうとしていた。
掘削能力に優れた怪人たちを中心に瓦礫を掘り進んだ結果、ついに待ちに待った瞬間が訪れた。

「いたぞーっ!啓太様だーっ!!」
『!!』

その言葉に怪人たち、特に幹部クラスは一目散に啓太のいるであろう現場に駆けつけた。
よほどあせっていたのだろう。
彼女らは救助中の怪人たちを突き飛ばし、すぐにでも啓太を助けようとするが、すぐに他の怪人たちに取り押さえられてしまう。

「ええい、何をするっ!?放せっ!放さんかっ!?」
「早くっ、早くしないと啓太様がっ!?」
「なりませんっ!今無理をしたら、また啓太様が生き埋めになってしまいますっ!
 今度そうなったら、どうなるか・・・っ!」
『・・・・・・ッ!!』

その言葉に、夢たち幹部クラスは苦渋の表情を浮かべたまま、おとなしくなる。
啓太の命がかかっているのだ、賢明な判断と言えよう。
しかしそれが断腸の思いであることには間違いなく。
口の端や握り締める手から血をこぼしながら、クロックが訊ねた。

「・・・啓太様の、状況は?」
「見た限り、お命に別状はないと思われます。
 おそらく崩落の際、とっさに鎧をまとわれたものと思われます。
 しかし完全には防ぎきれなかったらしく、おケガもひどい様子。
 早急に医療部で治療されるべきかと」
「・・・わかった。後は頼む」

夢たちは部下を作業に戻らせると、啓太を生き埋めにした張本人が現場にやってきた。
啓太が望んだこととは言え、最愛の主をここまで傷つけられた怒りは耐え難い。
周囲の空気は怒りと憎悪で渦巻き、気の短い乱やバルキリー、沈着冷静を旨とする刀や薙ですら怒りをあらわにしていた。

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