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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 51

それもただ斬っているのではない。
切り口から発火したり凍結したりと、まったく異なる種類の攻撃を一瞬のうちに繰り出しているのだ。
気づいたときには藁の束はバラバラになって床に落ち。
刀は緊張の糸が切れたかのように荒い息をついていた。
後にこの技は未完成ながらも『七連抜刀(しちれんばっとう)』と名付けられることになるのだが、それは余談である。
それにしてもこれだけの技を目の当たりにしながら『使えない』と切って捨てるあたり、ルシフェルも大物である。

「まぁ我流でそこまで磨いた剣の腕だけは認めてやろう。
 ―――私のシゴキに甘えはないからな。覚悟しておけよ」
「よ・・・!よろしくっ、お願い、しまっ・・・!」

ルシフェルの言葉に、自分がお眼鏡にかかったと知った刀は、荒い呼吸のまま何とか感謝の意思を述べる。

「ふむ。骨のありそうなのは全部で15人か。
 思ったよりも多かったな」
「・・・え?」

その言葉に啓太たちは困惑の声を上げる。
当然だ。ルシフェルがチェックしたのはお声がかかった怪人と志願者を合わせて全体の3分の1。
しかも最後まで見たのは合格した15名だけで、ほとんどは試験どころか一瞥されただけで終わってしまっているからだ。
そして何よりも啓太たちを驚かせたのは、最後のトリになると思われていた啓太の試験がなかったことである。

「ちょちょっ、ちょっとストップ!!え?お、オレの試験は?!」

緊張した身体に気合を入れて待っていたのにと言わんばかりに抗議する啓太。
他の怪人たちも納得いかないとばかりに抗議する。
しかし返ってきたルシフェルの言葉は、あまりにも現実的で非情だった。

「おまえなんぞ最初から不合格だ。他の連中も同じだ。
 脆弱すぎて、強くなる前に何度も死ねるわ。
 せめて彼我の実力を測れるくらいになってから来い」
「ちょちょっ、ちょっと待てーーーいッ!?」

あまりにもひどい言い分に、さしもの啓太も立ち去ろうとするルシフェルを引き止めた。
確かに啓太は自分の弱さを誰よりも自覚している。
だからと言って、夢とクロックの訓練にも耐えた根性まで否定されてはたまらない。
あの地獄を否定されることは、啓太のこれまでの決心を踏みにじられることだから。
納得いかないと言わんばかりに進路をふさぐ啓太たちを前に、ルシフェルは思わずため息。
おそらく『これだけわかりやすく言ってもまだわからないのか』みたいなことでも思っているのだろう。
彼女の言うことは正論かもしれないが、人間それだけではやっていけないのである。
大多数は人間じゃなくて怪人だけど。
口で言ってもわからない不合格者たちの様子に、ルシフェルはやれやれといった様子で、先頭を陣取る啓太に声をかけた。

「・・・おまえ、得意なモノは何だ?」
「ぼ、防御力だ。オレがその気になれば核ミサイルだって―――」

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