世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 5
「・・・ホント、ここもずいぶんおおきくなったもんだなぁ」
そういう啓太の視線の先には、男のライオン怪人に迫る3人の若い女怪人の姿があった。
彼女たちはつい最近アパレント・アトムに加入した新規メンバーで、名前をマローバ・ジャローバ・アクローバと言う。
元々は老婆の姿をした怪人なのだが、吸血鬼やサキュバスのように若い男からエネルギーを摂取することであのような若い姿になることができる。
たぶん、何も知らないライオン怪人からエネルギーを吸い取ろうという魂胆なのだろう。
他にも水棲型の野良怪人の集まり『アクアマリン』や、犯罪組織『業魔会』などいくつもの組織がアパレント・アトムと合併・吸収されていった。
そのたびに啓太はいろんなことを学び、成長してきた。
・・・しかしそんな啓太にも、いまだ解決できない問題というものがある。
その1つがこの宴会でもちらほら見かける、下腹部を大きく膨らませた女怪人たちだ。
彼女らの姿を見た啓太は、ちょうどいい機会だとばかりにクロックに聞いてみた。
「・・・なぁ。クロック。
今日はめでたい席だし、怒らねえからホントのことを話してもらえねえか?」
「ホントのこと・・・?さて、何の話ですか?啓太様」
「とぼけんな。あの腹の膨れた女たちのことだ。
今日という今日は、あいつらの子供たちの父親が誰なのか、正直に話してもらうぞ」
啓太の言葉に、クロックは今気づきましたと言わんばかりにうなずくと。
わざとらしくため息をつきながら質問に答えた。
「またそのお話ですか、啓太様?
彼女らは人間の母性を学ぶため、試験的に妊娠させた連中だと何度言えばわかるんですか」
「組織の力が弱っているときに、おまえがそんなことするわけないだろっ!?
だいたい試験的に妊娠させたって、組織の女がオレ以外の子供を妊娠したがるわけないだろっ!?
そもそも妊娠している女なら、非戦闘型の連中にもいるわけだしっ!」
クロックの答えに、啓太は負けじと強く反論する。
ちなみに非戦闘型怪人で妊娠しているのは、レフト・ファン時代に商品として意図的に作られた子供たちだ。
しかしアパレント・アトムの怪人は自分にしか抱かれないとは、啓太も言うようになったものだ。
「さあ言えっ。妊娠した連中の父親はオレなんだろ!?」
もうだまされないとばかりに詰め寄る啓太に、さしものクロックもこれまでかと思われたその時。
啓太の頭上から、何者かがダイブしてきた。