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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 40

「この程度なら二日もあれば十分に治る」
血を洗い流した右腕を啓太に見せる。
酷いと思われた右腕は小さい傷が薄れ始めていた。
大きな傷は未だに腕の肉が見えているが、それも直に治っていくだろう。
「自己治癒だけなら早い方でな。言っておくが、種明しをする気はないぞ」
「自分でも分からないと言う事でか?」
いぶかしげにする夢にルシフェルはただ、一言。
「手の内をあっさり喋るほど私はまぬけでもないという事だ」
啓太に背を向け、この話しは終わりとばかりに打ち切った。




営業時間を過ぎ、既に閉店したデリシャスに到着した一行を迎えたのは既に集まっていたアパレントの幹部総勢だった。
「お主はいつぞやの……」
その中に当然、薙がおりルシフェルを見ると驚いた表情を浮かべた。
「ふっ、あの時の女か……こうもあっさり再会するとは思わなかったぞ」
大して驚いていないとばかりに返すルシフェル。
むしろ楽しんでいるようでさえある。
こんな再会もまた一興とでも思っているのだろうか?
とらえどころのない、飄々としたその態度にみなが注目する中。
最初に動いたのは意外な人だった。

「それで?キミは誰で、なんで天使やら正義の味方に追われていたの?」

口火を切ったのは啓太だった。
しかもいきなり核心を突くストレートな質問。
そうそう口を割らないと言ったばかりで、それはないだろうとギャラリーが内心でツッコむ。
だがそんな中、夢だけは啓太のこの行動を評価していた。
なぜならルシフェルは、一瞬きょとんとした顔をしていたが。
次の瞬間には何がおもしろかったのか、大爆笑を始めたからだ。

「あははは!そう簡単に口を割らんと言ったそばから、そんなストレートな質問が来るとはな!
 あははは、おもしろい男だ!」

バカにしているとしか思えないその態度に、バルキリー他一部の怪人が気色ばむも、夢がその手で動きを制す。

「はー、はー・・・。い、いいだろう。
 こちらもおまえに助けられた借りがある。
 自己紹介くらいはしてやるよ・・・!」

するとルシフェルは瞳の涙をぬぐいながら、予想外の言葉を口にした。
ギャラリーがあっけに取られる中、夢だけはこの結果に満足していた。
確かに夢なり他の怪人が聞けば、こんなストレートに聞くことはない。
だが啓太なら。夢たちがするような駆け引き満載の言葉ではなく、純粋に知りたいだけの質問なら答えるかもしれない。
夢はそう考えたのだ。
そしてこの中でそんな芸当を自然とやってのけるのは、啓太1人しかいなかったというわけだ。

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