世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 30
特にクロックのような鬼教官に知られたときなんて、考えたくもない。
啓太はルシフェルに一般人と思われていることに心の底から感謝した。
しかし今はそれどころではない。
ウィルスを仕込まれたバルキリーの様子を見なくては。
そう思った啓太が『大丈夫か?』と励ましながら彼女の手を取ったその時だった。
「・・・。・・・〜〜〜○×△□※#%ッ!!??」
突然バルキリーの顔が真っ赤になったと思ったら、何言ってるかわからない言葉を叫んで啓太の手を振り払った。
そして触られた部分を、まるで火傷でもしたかのような様子で押さえ、見つめていた。
今まで見たことのないような反応に、啓太があっけに取られる中、我に返ったバルキリーが顔を真っ赤にしたまま懸命の言い訳を始めた。
「あ、いえ、これは、その、だ、大丈夫ですっ!
ちょ、突然でしたのでちょっと驚いて・・・」
「そ、そう・・・なのか?」
今まで逆に襲ってくるような積極的な女ばかり相手にしていた啓太は、違和感バリバリでとても信じられない様子だ。
しかしバルキリーはそれを気迫で押し通した。
「そうなんですっ!」
「は、はいっ!?」
そんな2人を、ルシフェルは冷静かつ客観的に分析していた。
(・・・ウリエルのヤツ、確かあの女に精神攻撃を仕掛けていたな。
侵食率は5%、だったか?
おそらくあの反応はそれによる影響か何かか・・・)
あの手の精神攻撃を無理に中断すると、記憶が飛んだり、精神に重大なダメージが残るものだ・・・が。
ウリエルを一瞬でもひるませた手腕とあの様子を見る限り、特に気にすることもないだろう。
そう判断したルシフェルは思考を切り替え、いよいよ話を切り出した。
「・・・で?そこの男、おまえは一体何者だ?」
「え?な、何のことでございましょうか?
わ、私はただの、何の変哲もない、フツーの一般人ですよ?」
いきなり鋭い質問をされ、啓太はあせりのあまり妙な口調になってごまかした。
その様子は滑稽を通り越して哀れにすら見えるが、話が話だけにバルキリーも突っ込みを入れる余裕がなかった。
「とぼけるな。
あのウリエルを一瞬でもひるませるような怪人を囲うような男が、ただの一般人であるものか。
さっさと正体を吐け」
「あら、それはおもしろいお話ですね、ルシフェル」
「私たちもぜひ混ぜていただきたいわ。ねえノワール?」
「「「!?」」」