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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 18


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「―――では、おまえが三方町で戦闘行為に及んだのはあくまで自衛のためと言うのだな?」

どこまでも続く広い闇。
壁も天井も、床の存在さえ怪しいその空間で、1人の少女がスポットライトを浴びていた。
彼女の名はルシフェル。
秩序を守る集団『ヒーロー協会』において新戦力として期待されている超人『アドヴァンストヒーロー』。
そのプロトタイプ(試作品)の1人が彼女である。
彼女がいるのは、東京湾の埋立地に作られた土地『新京』にあるヒーロー協会日本支部。
そこの地下大会議場だ。
今、ここでルシフェルはヒーロー協会秘蔵の力を試作品でありながら衆目にさらすという行為について裁判を受けている。
暗闇で姿こそ見えないが、この場には直属の上司である副支部長の大塔寺のほか、お偉方が集まって真偽のほどを検証している真っ最中だ。
この裁判に結果によっては、彼女は二度と日の目を見れないことになるだろう。
だがそんな危機的状況にいるとわかっているにもかかわらず、ルシフェルはふてぶてしいまでの態度を崩さなかった。

「・・・くだらん。どうせ謹慎処分にでもして終わりにするつもりだろう?
 時間の無駄だ。さっさと結論を出せ」
「き、貴様!自分で問題を起こしておいて、なんと言う・・・!」
「それも織り込み済みで、私を三方町なんてトラブルの発生しそうなところに送り込んだのだろう?
 私にプレッシャーを与えたいのか知らんが・・・。
 あまり私をナメるなよ」
「・・・っ!」

激昂しかけたお偉方を、たった1人の幼い少女が黙らせる。
それはあまりに異様な光景。
暗闇から発せられた隠し切れない敵意や憎悪といった感情がルシフェルの放つ気迫とせめぎ合い、空気をどんどん重く、緊迫させていく。
事態はこのまま泥沼になるのか?そう思われたその時だった。
ふてぶてしいまでの余裕を見せていたルシフェルが、突然見えない何かに押しつぶされるようにその場に倒れたのだ。
それはものすごい力を持っているらしく、倒れた彼女に一切の余裕と反抗を奪い去っていた。

「君の聡明さには感服するが、そのような態度はすべきではないな、ルシフェル」
「・・・っ、大塔寺、か・・・っ!」

今にも押しつぶされてしまいそうな何かに耐えつつ、ルシフェルが苦々しげにつぶやく。
反抗する術こそ失われたが、その気概だけは残っているらしい。
まったく見事なまでの根性である。

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