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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 119

だが彼らの痙攣は一向に止まらない。
なぜなら、死んだはずの彼らの身体は、体内からまったく別のモノに作り変えられていたのだから。

ビキッ!パキョメキャゴキッ!

無数の銃弾を浴びながら死人たちのカタチが変わっていく。
体内にもぐりこんだ弾丸は強化されたその筋力で体外へと排出され。
ハチの巣と化していた身体の穴が少しずつ小さくなってふさがっていく。
浴びせかけられる弾丸は黒化した皮膚によって体内への侵入を拒まれる。
痙攣を繰り返すネットワーク・フェアリーたちは全身黒タイツみたいな膜に覆われ、先ほどまで死んでいたのが嘘であったかのように次々と起き上がっていく。
事ここに至ってようやく彼らが自分たちの知るネットワーク・フェアリーとは別物になったと理解し、銃撃をやめたときにはもう遅い。

ボコッ!ズリョッ!ジュルンッ!!

黒タイツ集団の背中から大小さまざまな形の突起物が生えてきた。
ガラクタで作った翼のようなそれの先端がアパレント・アトムに向けられたその瞬間。

「―――!全員、伏せ・・・!!」

翼を形作っていた砲口から、一斉にプラズマビームが放出された。


――――

ズズ・・・ン・・・

「どうした!今の振動は!?」
「わ、わかりません!発生源は今戦場となっている地上支部!
 お、おそらく復活したネットワーク・フェアリーの攻撃によるものと思われます!」

アパレント・アトム本部にまで届いた振動。
それが何を意味するか理解したクロックや雅は、胸いっぱいに広がる苦汁の味に顔をしかめた。
だが部下を率いるものが感傷に浸ることは許されない。
クロックは黙したまま、雅は情報部の長として指示を飛ばす。

「本部全域に緊急警報発令!非戦闘員はただちに避難させ、ただちに迎撃態勢を整えるよう、警備部に伝えろ!
 それと各支部の戦闘要員をできる限り本部に召集!
 同盟組織にも協力の要請を―――」
「―――必要ない」
「ッ!?おいクロック、何を言っている!?敵戦力がどれほどのものか想像がつかないんだぞ!
 現時点で洗脳・回復・改造・・・どれもそこらの組織の技術とは比べ物にならない!
 ここで見栄を張って戦力をケチったりなんぞしたら、やられるのはこっちだぞ!わかっているのか!?」
「わかっている。わかっているうえで言っている。これは我々だけで解決すべき問題だ。
 他組織に救援を請うな」
「クロック!」
「二度も同じことを言わせるな。リリス・ヴァンパイア情報部部長」
「――――ッ!!」

人間名ではなく本名―――怪人名を呼ばれたことで雅は理解した。
これは最終通告だ。逆らうならおまえでも容赦しない。クロックはそう言っているのだ。
雅としてはこんな命令なんて聞きたくもない。いっそ無視してしまいたい。
だが。彼女は啓太の怪人でアパレント・アトム所属の怪人だ。
啓太のいない今、上司であるクロックに逆らうことは許されない。
彼女が黒と言えば、白いものに見えても黒なのだ。
部下たちが不安そうに指示を待つのを見て、雅は握りしめた手から血を流しながら指示を飛ばす。

「・・・クロックの言うとおり、他組織には連絡を入れるな。
 何か言われたらこちらで処理できると伝えろ。
 それと、敵に壊滅させられた支部に生き残りがいるかもしれん。
 敵勢力がこちらに来たのを確認後、医療班を組織させて救出に向かわせろ。
 ―――このくらいのことは、やらせてもらうぞ?」
「好きにしろ」

返事をしたクロックの言葉はどこまでも冷たく。
啓太のモノである仲間すら使い捨てるこの女に、雅は深く静かに怒りをたたえるのであった。
ビーッ!ビーッ!

『緊急事態発生、緊急事態発生。ないぶ基地内に外敵の侵入を確認しました。
 警備部・開発部・医療部所属の怪人はただちに戦闘配置についてください。
 また非戦闘員は情報部の指示に従い、速やかに非難してください。繰り返します。
 基地内に外敵の侵入を確認しました―――・・・』

アパレント・アトムを名乗って以来、1度としてなることのなかった警報に、基地はいまだかつてない緊張に包まれた。
外敵を排除するべく、戦闘要員たちは武器の調達や部隊の編制などであわただしく走り回り、基地の隔壁が次々と下ろされていく。
戦闘能力のない怪人たちは、警備部や情報部の案内・指示に従って避難所に逃げ込んでいく。

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