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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 117

だがまだ攻撃は終わってない。別人のようになったバルキリーの渾身の一撃がルシフェルの頭目がけて撃ち放たれる!
あれを食らえばさしもの彼女もトマトのように頭を砕かれるに違いない。

ド、ゴオッ・・・!

そして何かが砕ける、嫌な音がその場を満たした。
殺った・・・?交錯する2人の影。
そのシルエットはルシフェルの頭蓋を破壊したように見える。
だが11人の精鋭・側近を相手に戦ってきた彼女が、そう簡単にやられるわけがなかった。

「ガッ・・・!ハアッ・・・!?」

何が起こったかわからないという様子で血反吐を吐くバルキリー。
視線を落としてみれば、半ば巨大化した彼女の下腹部にルシフェルの肘がめり込んでいる。

「リーチやスピードばかりに気を取られてツメを誤ったアイツらも甘いが・・・おまえはそれ以上の大バカだな。
 そんな強引な肉体強化をすれば、肉体にゆがみが起こるのは当然。
 しかもパワーを優先しすぎてスピードが半減しているとなれば、このようなカウンターを決めることなど造作もないこと。
 さあ・・・その失敗、死をもって償え・・・!」
「グッ・・・ガッ・・・!?」

バルキリーの腹に添えられた手のひらが赤みを帯び、彼女の皮膚や肉を焼き始める。
逃げようにもダメージが大きすぎて身体の自由が利かない。
殺られる・・・!バルキリーが自分の死をイメージしたその時!

「!!」

突然ルシフェルは攻撃を中断してその場を退避。
次の瞬間、彼女のいた場所に細長い何かが突き刺さる。
それは鋭い刃物を無数につなぎ合わせた2本のワイヤー。
1本はヘビの身体を思わせるような太くがっしりとした重厚さを兼ね備え、もう1本はまるでその姿を隠すように細く長い糸のような形状をしていた。

「ガハッ・・・!ゆ、ゆ・・・め・・・?」
「お取り込み中、申し訳ありませんルシフェル様。
 すみませんが今度は私のお相手をお願いできますか?
 ついさっき何かをつかみかけたみたいなのです」

ジャラララッ!シュルルルッ!

耳障りな音を立てながら主の元に戻る2本の刃。
戻った2本の刃はやがて2本の剣となって持ち主の両手に収まった。
連接剣と呼ばれる伸縮自在、千変万化の武器を操るその者は啓太の第1の下僕にして右腕、夢その人であった。
バルキリーの窮地を救い、さらに正面から勝負を挑むその姿はまさに戦乙女のごとき百戦錬磨の風格が漂う。
この地獄の訓練の中でも、かなりの有望株の言葉にルシフェルは不敵な笑みをもって受けて立つ。

「くく、いい。今のはなかなかよかったぞ?
 音と気配を完全に断ち、いくつものフェイントをかけて死角から攻撃していた。
 いいだろう。今度はおまえの相手をしてやる」
「光栄です。・・・バルキリー、今のうちにその無茶な肉体強化を解除し、体力を回復させなさい。
 あなたにはもっと別の、あなたに適したやり方があるはずです」
「・・・!ハ、ハイッ・・・!」
「では・・・参ります!!」

そう言って仲間の過ちを正した夢は、猛然とルシフェルに挑みかかった。
この訓練終了後、彼女ら11人は今よりさらに強くなることになる。
それは彼女らを作り彼女らに滅ぼされたものたちにすら想像もできないほどの、劇的な成長であった。
――――

そして時刻は元に戻る。
次の物語の舞台はアパレント・アトムが有するとある企業ビル。
一見まともそうな企業に見えるが、その実基地に必要な資材や食料、資金などを運搬する大事な中継基地の1つである。
この手のカムフラージュは悪の組織ではよく使われる手段の1つである。
健全な企業ならたいていの人間は疑いの目を向けてこない。
もし何らかの原因でバレたとしても、夜逃げのように証拠も残さずトンズラしまえば組織としては大したダメージもない。
とは言え、今は緊急時。
本部基地にほど近く、また外部との出入り口としていろいろ利用されていることもあり、いつも通りに見えるビルは厳戒態勢を敷いていた。
もし誰かが怪しい動きをすれば、死角に設置された無数の銃口がその人物を狙い、ビルの会社員(全員アパレントの怪人か戦闘員)がその目を光らせることだろう。
普通ならすぐさま抹殺、もしくは拉致するところだがこのあたりはお人よしの啓太の教育・・・否、わがままのたまものと言ったところだろう。
群体怪人ネットワーク・フェアリーが離反し、組織に、ひいては啓太に弓を引いたことは伝えられている。
もし連中が姿を現せばどうなるかなど言うまでもない・・・のだが。

「お、おい・・・!来たぞ!ネットワーク・フェアリーだ!」
「本当か!?組織を裏切ったことはもうとっくに知られてるってのに、なんて短絡的な・・・!」

ビルで働いていた怪人たちは、真正面から堂々とやってきたネットワーク・フェアリーを前に、ひそかに戦闘準備を進めていた。
彼ら(あるいは彼女ら)はカクガクと、へたくそな操り人形のようなぎこちない動きとうつろな表情でこちらに向かってくる。
真昼間から怪しさ大爆発の集団に、何の関係もない一般人はすっかり引いて連中から離れていく。
ムダな犠牲者を出したくない怪人たちからすれば、ありがたい限りだが非常に判断に迷うところでもあった。
何しろ今は日中。ドンパチを始めることなどいつでもできるが、確実に人目につく分、あまり派手なことをしたくない心理が働いてしまうのだ。
だが相手は白昼堂々、真正面からやってきている。
それが何を意味しているかなど考えるまでもない。

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