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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 12


できることなら今すぐこの場から逃げ出したい。
彼女は部下と違って、強制命令を受けていないのだ。
しかしここで逃げ出せば、さらに事態が悪化するかもという不安と恐怖が、バニーをその場に留まらせていた。
そしてバニーが来てほしくないと一心に願っていた啓太がついに部屋に戻ってきた。
恐怖でバニーのうさぎ耳がへたりこんだように折れる。

「逃亡してたら逃亡罪で銃殺にするつもりだったけど、逃げずにちゃんといたんだね。うん。よい娘だ。」
部屋に入ってくるなり、さっきまでの怒りが嘘のように上機嫌で啓太は言った。
啓太の目に映っているのは、超がつくほど可愛い美人で賢いのに気が弱すぎる、そんな1人の女の子だった。
もっとも、啓太を含めて多くの男性にとっては可愛くて気の弱い美人というのはむしろツボなのだが、幸か不幸かバニーはそのことを知らなかった。
むしろ先ほどの『逃亡罪』『銃殺』という言葉にすっかり怯えてしまっていた。
ちょっとした冗談のつもりだったのに。

「もっ・・・ももも、申し訳ごじゃりましぇんっ!?
 わ、わわわ、わたひ(私)がしっかりしへいなかっちゃせい・・・べッ!?」
「うおっ!?し、しっかりしろバニー!?傷は浅いぞっ!?」

緊張と恐怖のあまり、呂律が回らずにバニーは盛大に舌を噛んだ。
その噛みっぷりはそれはもうマンガやコント並の勢いで、さすがの啓太もびっくりした。
マジカル・バニーはちょっとだけ舌の痛みに悶絶していたが、それより捨てられる恐怖が上回ったのだろう。
彼女は言葉の代わりに、深々と頭を下げて許しを求めた。
その様子に内心ホッとしつつも、少々いぢめすぎたと反省する啓太。
自分の一言一句、一挙手一投足に一喜一憂する怪人たちの態度と忠誠心は呆れるほどにすばらしい。
それが自分よりはるかに優秀であるとなれば、なおさらだ。
だから時々、こういうイタズラ心が芽生えてしまうわけなのだが・・・。
啓太はあまり人付き合いのうまいほうではないので、こーゆーミスもよくやってしまうのだった。

「・・・頭を上げろ」
「は、はいぃっ!」

啓太は今にも涙をこぼしそうになって頭を下げているバニーの頭を上げさせると、謝罪のつもりでバニーの頬にキスをした。
そしてそのまま舌を目元まで持っていって、こぼれそうになっていた涙をなめ取った。

「け、啓太・・・様・・・?」

啓太が怒っているものとばかり思い込んでいたバニーは、その行動の意味がすぐに理解できず、訳がわからない様子で啓太の名前を呼んだ。

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