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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 107

彼女は事前に啓太から指示を受け、皮膚組織の下に強固な装甲を仕込んで即死の1発から啓太を守って見せたのだ。
普通、狙撃とは相手に気づかれないよう、ターゲットの死角から遠距離で狙うものだ。
しかし啓太はわざと1か所だけ狙撃できるポイントを開け、いつでも守れる状態を作っていた。
操からすれば、至極簡単な仕事だったのだ。
むしろ啓太が黒い繭に閉じ込められている連中に襲われたときのほうが冷や汗モノだった。
いくら啓太の命令とは言え、目の前の危険を無視してやられるようなことがあっては死んでも死にきれない。
それだけに啓太がネットワーク・フェアリーをいとも簡単に捕えてしまったときは心底驚いた。
まだまだ青いところは健在のようだが、やはり今の啓太は以前の彼とは違っている。
その劇的な成長ぶりに、操は感動と同時に言い知れない不安と恐怖を感じていた。
肝心の啓太は操のそんな心の機微に気付くことなく、そこから跳び上がると自分を撃ってきたスナイパーを目指して一直線に駆け出した。
大学のフェンスを飛び越え、住宅の屋根に跳び上がろうとした瞬間、大量の弾丸が啓太を襲う。
しかしその展開を当然読んでいた啓太は、事前にまとった鎧の装甲でこれらをすべて弾き返す。

「操。今撃たれたところから残敵の位置情報をまとめろ。
 オレは最初に打ってきたスナイパーを黙らせる!」

啓太はパラサイトの・・・いいや操のアシストを受けながら、屋根から屋根へと飛び移りターゲットとなったスナイパーを補足する。
今仲間を守ろうと必死に撃ちまくっている連中の数を含めてその数5人。
強さとしては低レベルだと啓太と操は判断した。
撃てばそれだけ自分の位置を敵に知らせることになるし、啓太の弱点である関節や目には銃弾が飛んでこない。
嫌がらせみたいに頭や身体に当ててくるだけだ。
もともとネットワーク・フェアリーは通信型の怪人だし、装備も啓太のことを考えて、むやみやたらと死人を出さないような武器を携帯していたのだろう。
啓太は今までのヘタレっぷりからは考えられないような動きで次々とスナイパーたちを拘束していく。

「―――3人目ッ!これであと2人!」
(ッ!啓太様、お急ぎを!ヤツら、撤退を開始しました!)
「チイッ!?操、もうひと踏ん張り頼むぞっ!!」

啓太は1人も逃がすまいと懸命に逃げるスナイパーたちを追いかける。
その甲斐あって何とか4人目まで捕縛したが、その時にはもう最後の1人の行方はわからなくなってしまった。

「操!ラス1がどこにいるか、わかるか!?」
(・・・いえ、申し訳ありませんがもう追跡は不可能かと)
「くそッ!よけいな火種を残しちまったか・・・」

啓太が思わず毒づいたその時だった。
啓太の中に潜んでいた操が、何かに気づいて声を上げた。

(―――!?啓太様、少々視界をお借りいたしますっ!)
「え・・・?ぐおっ!?」

許可を出す間もなく啓太の首が勝手に動き、ある一点を凝視する。
首の痛みに耐えつつ、いったい何があったのかと思えば。
視界の中央にある家の屋上に、誰かを肩に担いだ金色に輝く人影がこちらを見ているではないか。
そいつは啓太に向かってこっちに来いと言わんばかりに手首を振っている。
罠か挑発か知らないが、そんなあからさまに怪しいものにホイホイ乗るヤツがいると思っているのだろうか?
当然啓太はその場から動こうとはしなかった。
一向に動こうとしない啓太に業を煮やしたらしい金色の不審人物は、ため息でもついたのか肩を落とすといったん民家の屋根から飛び降りて姿を消す。
しかしそれは時間にして1分にも満たない。
金色の人物は再び戻ってきた。左手に、逃がしてしまったネットワーク・フェアリーの首根っこをつかんで。

「―――ッ!?」

これにはさすがの啓太も動揺を隠せなかった。
金色の不審人物はそれを足元に放り出すと、再びこっちへ来いとジェスチャーを始めた。
さすがの啓太にもその意味するところはすぐに理解できた。
ネットワーク・フェアリーがほしければこっちへ来いと言ってるのだ。
突然現れた金色の不審人物。
啓太たちはこの時知る由もなかったが、それはエレメンタル・ガーディアンから負傷したエルカイザーを救出して逃げたゴルディアースこと、鬼瓦哲悟その人であった。

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