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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 106


バカにしたような返事の後、啓太は同じ質問を繰り返した。
ただし今度は『絶対命令権』を行使して。
永遠も他のネットワークフェアリーも、みんなおかしくなって啓太たちに危害を及ぼしている。
だが彼らが啓太の所有物であることは変わりない。
啓太はそれを知っているからこそ、こうして前に出てきた。
自分の持っている力が狂ったネットワーク・フェアリーに通じるかどうか確かめるためにも。
それは以前の啓太ならば、こんなことに自らを危険にさらそうなんて考えない。
彼は今、確実にそして劇的な成長を遂げつつあった。

「ああッ!?が、あッ・・・!」
「き・・・さまぁッ!何を・・・したァッ!?」
「こ、これは・・・『絶対命令権』?」
「あ、ああッ・・・!す、すみません啓太様・・・!私は・・・!ワタシハ・・・!」
「わ、わたっ・・・私の主人は啓太・・・様?でも啓太様は私の敵で・・・。
 ではウリエル様が私のご主人様?でも絶対命令権を使っているのは啓太様で・・・」
「ごめんなさいゴメンナサイgomennasai・・・」

もがき苦しむもの、逆上するもの、混乱するもの、謝るもの。
個々の反応は様々だが、啓太の質問に正確に答えたものは誰もいない。
わかったのはこの許されざる茶番を仕掛けたであろう『ウリエル』という犯人の名前のみ。
それからも数分観察したうえでこれ以上の情報を手に入れられないと判断した啓太は無言で右手を空へとかざす。

「ご苦労だったな。今楽にしてやる」

次の瞬間、啓太の手から黒い布のようなものが溢れ出し、ネットワーク・フェアリーたちの身体に絡みついていく。

「『おまえたちをおかしくした犯人についてはもうオレに教えなくていい』。
 そこでゆっくり休んでろ」

その瞬間ネットワーク・フェアリーたちの苦しみは消えた。
自由になり、再び啓太の敵にも戻った彼らはすぐさま黒い布からの脱出を試みるが・・・すでに遅い。
黒い布はネットワーク・フェアリーたちの身体に密着するように絡みついており、脱出不可能であった。
それでも彼らはあきらめずじたばたともがいていたが・・・やがて彼らは黒い繭となって地面に転がった。
黒い布の正体は啓太の作りだした装甲だ。
見た目は布だが1枚1枚柔軟かつ頑強に作られており、簡単には引き千切れないようにしてある。
それがターゲットの身体を余すところなく包み込んでいるのだ。
通信型怪人であるネットワーク・フェアリーの力ではとても脱出などできないだろう。
何しろ武器を振り回すだけのスペースすらないのだから。

「さて次は・・・」

ダ、カンッ!

啓太が次の行動に移ろうとしたその時だった。
突然高質な音がしたかと思うと、啓太の身体が横に吹っ飛んだ。
敵の姿はどこにも見えない。おそらく残党がどこからか狙撃してきたのだろう。
敵を倒して油断したそのタイミングを狙った完璧な狙撃。
これでこの物語は終わった。そう思われた次の瞬間。
狙撃された啓太の身体が一瞬にして黒く染まり、怪人形態となって立ち上がった。
姿こそ見えないが、きっと狙撃手は驚いていることだろう。
殺したと思ったはずの人間が、何事もなかったかのように立ち上がったのだから。
しかし狙撃手は忘れていた。啓太には直純・永遠・牛沢のほかにもう1人啓太のボディーガードがいたことを。
それは能力の性質上決して姿を現さず、時には啓太の剣として力を振るう、啓太の懐刀とも言うべき怪人だった。

「よくやったぞ、パラサイト・インベーダー。いや、今は形代操だったっけな」
(お好きなほうでお呼びください、啓太様。
 あなた様の気に入られた名前が私の名前でございますので)

啓太の言葉に、啓太だけに聞こえる女の声がその脳内に響き渡った。
怪人パラサイト・インベーダー。人間名、形代操(かたしろ・みさお)。
生き物の体内に侵入し、宿主を操ったり強化したりすることのできる怪人だ。
組織では夢やクロックにその能力を見込まれ、啓太の護衛役として24時間体制で啓太の体内に潜んでいる。
先ほどの狙撃を防いだのは彼女の仕業だ。

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