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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 104


「な、なんで!?なんで私のロープが切られてるの!?
 これ、私の身体からできてるから、ちっとやそっとじゃ切れないはずなのに!
 い、いやそんなことより!なんであのボロボロ女がいなくなってるの!?
 あのダメージで動けるはずなんかないのにっ!?」
「・・・っ!?」
「お・・・落ち着け、朱鷺!みどり!マリア様っ!これは、いったい・・・!?」
「・・・っ、そこぉっ!」

混乱の極みに陥った朱鷺とみどりに一喝する蒼だが、やはりショックは大きかったらしく、動揺を隠しきれていない。
冷静沈着を旨とする蒼が、思わず先輩であるエレメンタル・ガーディアンに指示を求めたその時。
何かを感知したマイが、懐に忍ばせていたナイフを投げつけた!

ガゥンッ!キンッ!

投げられたナイフは、その途中で軌道を変えて地に落ちる。
直前の音からして、おそらく銃で撃ち落とされたのだろう。
そして銃声のあったその先には。

「やれやれ、できればさっさとトンズラしたかったんだが・・・。
 ずいぶんカンのいいお嬢さんだな。これだから女ってのはやりにくい」
「・・・!お、おまえは!?」

木の上にいたのは、黒の剣士を担ぐ黄金の戦士。
それが誰なのかは見た瞬間、全員が理解した。
目の前の相手がだれか知らないのは、バカか赤ん坊くらいのものだろう。
彼の名はゴルディアース。かつて世界中の正義の味方と悪の組織が戦ったという『大戦』を生き抜いた正義の味方。
その中でも活躍したとされる5英雄と呼ばれるものの1人だ。
思いがけない強敵の出現。
いや、それ以前に気配も何も感じさせることなく、エルカイザーを救出したその手腕にマヤたちは大いに戦慄した。

(こっ・・・この男!私たちに接近を感じさせることなく、仲間を救い出しただと!?
 バカな!腐葉土というやわらかい足場で、枯れ葉を踏む音を鳴らさずにどうやって来たと言うの!?)
「ご・・・ゴルディアース!?き、貴様!なぜここに!?
 私はおまえの助けなど・・・ゴホッゴホッゴホッ!」
「ったく、心配してやってきてみれば。
 無茶してまでしゃべるんじゃねえよ、エルカイザー。口を酸っぱくして教えてやっただろう?
 『おまえは強い。だが強さに過信するな。過信は己を滅ぼす敵の1つであると知れ』・・・ってな」
「・・・っ!」

己の失態を指摘されて悔しいのか、エルカイザーはゴルディアースから視線を外すと、それきり何も言わなくなった。
それを幸いとばかりに、ゴルディアースは自分に武器を向ける敵の群れに目をやった。

「すまないな、こっちは事を荒立てるつもりはなかったんだが、ウチの部下のせいでとんだ迷惑をかけちまった。
 上司として深くおわびするよ」
「ま、最近の正義の味方にしてはすごく謙虚!めっずらし〜!」
「何を感心してる、バカ者。相手は正義の味方だぞ!?このまま終わるわけがないだろう!」
「・・・っ!?(そうなの!?と言わんばかりに反応)」

ゴルディアースの謝罪に三者三様の反応を見せる朱鷺・蒼・みどり。
普段ならここで指導官であるエレメンタル・ガーディアンの3人が話の流れを戻してくれるところだが・・・。
なぜかいつまでたってもツッコミの1つも返ってこない。
さすがに違和感を感じてそちらに目をやると。
そこにはこれ以上ないほど緊張した面持ちでゴルディアースを見つめる、3人の先輩メイドがいた。
流れていく冷や汗の量を見る限り、尋常でない様子だ。
まだまだ未熟で目の前の敵の恐ろしさを知らないみどりたちは、緊迫感に耐えかねて質問をぶつけてみた。

「ど・・・どうしたんです、先輩!?
 目の前の敵はそれほどまでに脅威なのですか!?」
「し・・・知らない!わからないよ!」
「な、なのに身体が雷に打たれたみたいに・・・う、動けなくなって・・・!」
「何者なんですか、あなたはっ!?私たちいったい何をしたのです!?」
「何って・・・別に何もしてないぜ?アンタらが勝手に固まっているだけだろう?」

事実である。ゴルディアースはエルカイザーを助けたこと以外、何もしていない。
ではなぜエレメンタルの3人は動けなくなったのか。
その答えは至極単純だ。彼女たちの身体が警告しているのだ。
死にたくなければ動くな。彼に恭順の意思を示せと。
もちろん彼女らに正義の味方だった時の記憶は存在しない。
彼女らをその場に縫い付けているものは肉体に染みついた恐怖。
頭では忘れていても、肉体に染みついた恐怖が彼女らの自由を許さなかったのだ。
だがそれを知らないゴルディアースは、ヘルメット越しに頭をかいてこう言い放った。

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