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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 102


――――

ゴッ・・・!

「くっ・・・!?」

その頃。斬魔大帝エルカイザーはいまだかつてない苦戦を強いられていた。
みどりの手によって不死身の怪人、朱鷺が投げつけられる。
エルカイザーは大きく右に移動してそれをかわす。
投げられているのはナイフや銃弾ではない。意志と生命を持つ怪人だ。
最小限の動きでかわせば身体をつかまれ、致命的なスキを作ることになる。
それはこれまでの戦闘で、身体で覚えた大事な教訓だ。
しかし大きくかわすということはそれだけ動きが読みやすく、スキが生まれやすいということでもある。
かわしたところにエレメンタル・ガーディアンの魔法攻撃と蒼の銃弾が雨あられのように降り注ぐ。

「ぐっ、く・・・!ナメるなああぁぁぁッ!?」

エルカイザーは回避をあきらめるとダメージ覚悟でマヤ1人に狙いを絞って間合いを詰める。
しかし次の瞬間、横からものすごい衝撃が走って吹っ飛ばされる。
いつのまにか近くに来ていたみどりがタックルを仕掛けたのだ。
魔法攻撃に比べれば大したことのないダメージだが、そこにまた魔法攻撃やら朱鷺の体当たりやらがやってくる。
まるで底なし沼かアリジゴクにはまったような、一方的な戦いだった。

(くそっ、くそっ、くそっ!何だこれは。何なんだこれは・・・っ!?
 なぜ私がここまで追い詰められている!?初代の後を継ぎ、初代以上の力を手に入れたはずのこの私がっ・・・!?)

それは2代目エルカイザーを襲名してから初めて味わう苦戦・・・否、負け戦というものだった。
普通、ここまでやれれば逃げ出してもおかしくないのだが、負けを知らないゆえの無知さとプライドがエルカイザーをその場にとどまらせていた。
彼我の力量もわきまえず、戦いを続ける者にはどんな結末が待っているかなどもはや語るまでもないだろう。
だが仮にも正義の味方を名乗るものがただ無様に負けるはずがない。
エルカイザーは覚悟を決めた。

「「・・・!」」
「気をつけなさい、朱鷺!最後のこう・・・」
「わ〜かってますってぇ、マリア先輩っ!最後の攻撃が来るんでしょ!?
 ま、いくらカクゴ決めたところで私たちに勝てないってところ、見せてあげますよっ♪」
「・・・朱鷺。アンタ、帰ったらお説教ね」
「ええッ!?そんな、なんでぇ!?」

人のセリフを遮った挙句、敵をなめきった発言をしたからなのだが・・・。
この軽い性格の怪人がそれを理解することはまずないだろう。
・・・と、怪人側が軽いコントをやってる間にエルカイザーは最後の攻撃準備を済ませていた。
恐ろしく長い黒刀を地面に突き立て、両手をだらんと垂らして突っ立っているだけ。
怒りや動揺、殺気までもが鳴りを潜め、戦う気力をなくしたのかと疑いたくなるほどだ。
だがうかつに手を出せば、屍となって横たわるのは自分たちのほうだとマイたちは理解していた。
あれは背水の陣だと。
敵は今、自分を追い込んで持てるすべての力を攻撃に転化しようとしている。
その一撃は間違いなく戦局を逆転させるほどの威力を持つだろう。
戦略的にはそんな危ない相手は無視しておくのが1番楽なのだが・・・。
目の前の敵を放置すれば、間違いなく主である啓太に害をなす。
メイド部隊は否応なしにこの見え見えの挑発に乗らなければならなかった。

「みどりっ」
「・・・(コクリ)」

あからさまなカウンターを狙うエルカイザーに対し、メイド部隊は朱鷺を主軸としたコンビネーション攻撃で行くようだ。
朱鷺は自らみどりの手を取り、投げられる準備を整える。
1秒、2秒―――。
永遠とも思える時間が刻々と流れていく。―――そして!

「行くわよっ!みどりっ!!」
「・・・・・・!!」

ついにみどりの手から朱鷺の身体が投げ放たれた!
およそ人間が投げられたとは思えない高速で朱鷺が飛んでくる。
だがエルカイザーはそれでも動かない。
エルカイザーは待っているのだ。最強の攻撃を当てる最高のタイミングを。

(確かに攻撃の起点となっているあの女は、首をはねても胴体を真っ二つにされても死なない。
 だが・・・その中で明らかに攻撃を避けている部分があるッ!)

その部分とは―――頭。
受ければ即死の一撃を唯一食らってない部分。
おそらくそこが弱点だと、エルカイザーは踏んだのだ。
そしてエルカイザーの身体が高速を超えた超速で動き出す。
限界を超えた動きに骨が軋み、肉が悲鳴を上げ、血が涙となって溢れ出す。
その一撃は間違いなく朱鷺の頭蓋を粉々に切り裂く―――はずだった。

パシィッ・・・。

「・・・え?」

自分の攻撃が空振りに終わろうとする光景に、エルカイザーは思わず声を上げた。

(待て―――。なぜ自分の攻撃が空振りする?
 なぜ、投げたおまえが―――そこに立っているんだ・・・!?)

エルカイザーは信じられないものを前に、目で問いかける。
そこには、1秒ほど前に朱鷺を投げたはずのみどりが、朱鷺の前に現れて彼女を受け止めていたのだから。

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