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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 101


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「直純ッ!待てッ!止まれッ!まだあそこには牛沢と永遠がっ・・・!」
「ダメですっ!今はあなたの安全を確保するのが最優先ですっ!」
「そんなこと知るかっ!?いいから止まれっ!これは命令だぞ!?」

だが直純の足は止まることはない。
初めて目の当たりにした仲間の裏切りと死。
そのショックで強制命令権を使うことを完全に忘れているようだ。
なるほど、確かに今の啓太を戻したところで何もできはしないだろう。
牛沢の最後の願いと最優先事項を守っているぶん、直純のほうが正しい判断をしていると言わざるを得ない。
だが。それでも啓太は直純の肩の上で帰れ、戻れと繰り返す。
あの2人を助けるすべなど啓太にはない。
それがわかっていても助けたい。その一心での行動であった。
直純はそれらを無視し、大学内に用意した避難場所の1つ―――教員棟の屋上へと身を隠す。
肩からおろされた啓太は怒りと悲しみに満ちた表情で直純に怒鳴りつけた。

「なんでアイツらを見殺しにした!?まだ、助けられるかもしれなかったのに!!」
「牛沢はあの時点ですでに致命傷を受けており、助かる見込みはありませんでした。
 永遠は敵の手に落ち、殺す以外に手段はありませんでした」
「だからって!アイツらはおまえの大事な仲間だろ!?
 なんでそんな簡単に見捨てることができるんだよ!?」
「啓太様のご安全を守ることが最優先だからです。
 啓太様の正体を守らねば、啓太様はこの先ずっとその命を狙われることになりますので」
「そんなこと!そんなことどうだっていいんだよ・・・!
 早く、早くあの2人を助けないと・・・!」

あきらめようとしない啓太に、直純は少しだけ間をおいて残酷な事実を伝えた。

「・・・手遅れです。あの2人は、もう・・・」
「―――!!もういい!オレ1人だけでも助けに行くっ!」
「なりません、啓太様!それだけは―――それだけは絶対に!」

立ち上がった啓太を、直純は懸命に止める。
だがどれだけ言葉を重ねても、啓太はまるで聞く耳を持たない。
もはや言葉の通じる状態ではない。
そう悟った直純はポケットから何かを取り出し、口に含むと突然啓太にキスをした。

「―――!?」

ゴ・・・クンッ。

いきなりのことに驚いているそのスキに舌をねじ込まれ、一緒に口の中に入ってきた『何か』を飲み込んでしまう。
何かされた。そう理解した啓太はとっさに直純を突き飛ばし、えづいて吐き出そうと試みる。
だが飲み込んだものが出てくる気配はまるでない。
えづく啓太に直純は淡々と語りかけた。
「媚薬を飲ませました。強力で即効性ですから、すぐにキますよ」
「なおっ・・・ずみ、てめっ・・・」
「どんなに憎んでも、恨んでもかまいません。
 私たちはそれだけの大罪を犯した。事が終わったら、殺してくれてもかまいません」

一人称を『オレ』から『私』に変え、自らの服に手をかける直純。
それは彼女が大学のいち生徒を演じることをやめて啓太の所有物に立ち返った、何よりの証拠だった。
能力でさらに大きくしているのか、小柄な体格に似合わぬ巨大な乳房がサラシの中からこぼれ出る。
啓太は黙って直純を睨みつける。
さっそく薬の効果が出始めたのか、それとも怒りと憎悪で言葉が出ないのか。

「でも今だけは死ぬわけにはいきません。
 永遠は私たちを裏切り、牛沢は啓太様を一般人として逃がすために死んだ。
 エレメンタル・ガーディアンたちは今、ここに来ている敵を迎撃するために出払っている。
 本部からの増援が来るまで、啓太様をお守りできるのは私しかいないんですよ。
 とは言え、それでは啓太様のお怒りが静まるはずもなし。
 本部にはすでに連絡を入れました。増援が来るまでの間、せめて私をなぶってそのお怒りを晴らしてください」

本当に申し訳なさそうに。
悲しく微笑む直純の肩を、啓太は無言でつかみ・・・押し倒した。
両の瞳から大粒の涙をポロポロとこぼしながら。
それは牛沢たちを見捨てた怒りによるものか、薬に動かされている自分自身への怒りなのかは啓太自身にもわからなかった。

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