モンスターハーレム 165
とにかくこれは天の助け。今のうちにオルゾスから離れなければ!
オレは急いで背後で潰れているテスに声をかける。
「おい、テス!大丈夫か?」
「あ、ああ。大丈夫だ、お兄ちゃん。
お兄ちゃんこそ大丈夫か?」
「オマエのおかげでな。それより仲間の様子がおかしいんだ。
いったんここから逃げるぞ?」
「逃げるな、この色魔ッ!我が剣のサビとなって死ねえっ!!」
冗談じゃねえ。
オレは怒り狂うオルゾスの剣に注意しながら、サルモネラの開けた穴に向かって移動する。
「ったく、冗談じゃねえ。
状況もわからないまま死んでたまるかっ」
オレは見当違いの文句を垂れ流しながら穴をくぐる。
「マスター、早くッ!」
「すまない!テスっ、オマエも早く!」
差し出されたオリオールとラムレーネの手を取り、オレはようやく安全地帯に逃げ込んだ。
だが安心はするのはまだ早かった。
オルゾスにはまだ奥の手が残されていたのだから。
そして敵は思わぬところにも存在していた。
・・・と言うより、今まで出番がなかったせいですっかり忘れていたのだが。
「ラグ様!早くこっちへ!」
「・・・っ、オリオールちゃん、ちょっと待った!
向こうから何か来てる!」
『!?』
ラムレーネの言葉に、全員に緊張が走る。
後ろではオルゾスの怒声とそれを止めようとする狭霧とサルモネラの声が聞こえるだけに、kン長の度合いは否応なしに高まる。
敵か?それともミミでもやってきたか?
光苔で見えるはずの通路は石の林で覆われ、視界が悪い。
やがて暗闇にまぎれ、もぞもぞと動くシルエットが徐々にその姿をあらわにした。
「おお・・・おぉぉおおぉ〜・・・!」
「男・・・!若くてたくましい・・・男ぉッ!?」
イモムシのようにうごめく影の正体。
それは暴走したオレの魔法によって身動きが取れなくなった反対派のザコどもだった。
強制的に肉体を強化され、死ぬほどの激痛を味わった彼女たちは、復活と同時に暴走モードに入ってしまったのである!
本能がむき出しになった彼女たちは、よりよい子孫を残すべく、イモムシのような緩慢な動きでこちらににじり寄ってくる。
その不気味な動きはまるでゾンビ。
発情ゾンビと呼べる存在と成り果てていた。
しかし今、歩みを止めるわけには行かない。
出なければ怒り狂ったオルゾスに殺される。
「・・・うおおぉぉっ!!」
「突貫〜ッ!!」
オレはオリオールたちと目配せすると、雄叫びを上げて発情ゾンビどもに向かって突っ込んでいった。