モンスターハーレム 117
そう言って微笑む女。
その顔にはイタズラ好きな子供のような無邪気さと娼婦顔負けの妖艶さが入り混じっている。
その笑顔に、同じ女であるはずの魔物でさえも胸の高鳴りを感じずにはいられなかった。
しかしその隣からの答えは至って冷静なものだった。
「・・・私にはそんなことどうでもいい。
ただ、私を殺せるだけの実力があるなら、それでいい」
今までの空気に氷水をぶっかけるような、暗い、声。
機械めいた冷たい声の主は、それきり口を閉ざしてしまった。
「・・・相変わらずネガティブ街道まっしぐらだな」
「しょうがないわよ。
テスちゃんにはもうそれしかないんだから」
そう言うと妖艶極まるボンデージの女は、沈黙を続ける魔物の元に近寄り、彼女の顎をクイ、と持ち上げた。
顔がパラリと流れ、青みがかった銀髪に隠れていた端正な顔立ちがあらわになる。
「それにしてもホントもったいない話よねぇ。
こんなにキレイな顔と身体を持っているのに、男1人しか知らないなんて」
「・・・・・・・・・」
「ねぇ、そんなに死にたいなら私のモノになってみない?
毎日快楽で殺してあげるわよぉ?」
そう言ってボンデージ女は光のない瞳を向ける女の耳元に息を吹きかける。
しかし相手が動じる様子はまるでない。
何も感じていないかのように。
「・・・興味がない。あの方を仕えること以上の快楽など私には存在しない」
「むぅ〜・・・つまんないわねぇ」
そう言いながらボンデージ女はしぶしぶと無感情女から離れていく。
「それで?ウワサの魔王サマはここまで来てくださるの?」
「ああ。襲撃した連中の何人かが捕虜となったんだ。
我々がねぐらを変える前にここに来るはずだ」
「うふふ♪ホントにここまで来てくださるといいんだけど?」
ボンデージ女は楽しそうにクスクス笑う。
その隣で無表情女はのそりと立ち上がり、部屋を出て行く。
「どこへ行く?」
「戦場へ」
「今度こそ願いがかなうといいな?」
「・・・ああ」
そう言って無感情女は部屋を出て行った。
部屋から出て行った彼女の名前はテス。
先の大戦で生き残った現魔王軍の中枢を担う将軍の1人である。
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「なっ、何だとぉッ!?」
「てっ・・・『鉄壁』のテス将軍に『妖艶』のキュリエル将軍・・・!?
挙句の果てに『凶将』サーク将軍が反対派のトップ・・・!?」
「じょっ・・・冗談でしょ?」
オレの口から明かされた衝撃の事実に狭霧以外の面々から驚きと絶望の悲鳴が上がる。
将軍というくらいだからよほど強いことは予想していたが、こうも騒がれるとちょっと興味が湧いてくる。