淫魔界にようこそ 20
「・・・・・・え」
思わず露骨な嫌な顔を雄介が浮かべたのも、まあしょうがないといえば、しょうがなかった。周りから迸る鬼気の如き嫉妬の嵐。膨れ上がる威圧感は物理的な感触さえあり、胃がキリキリと痛み出す。
「えっと・・・他の人では駄目なんですか?」
とりあえず尋ねると共に「はいはい俺俺!」「バッチリ仕事をしてみせますよ!」「雪村先生。私たちも」
一斉に手が上げられる。軽く見ただけでも数十人は上がった手を無視して白那さんは黒曜石のように綺麗な瞳で雄介をじっと見つめ、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「秘森君。これから少し手伝ってくれませんか?」
・・・・拒否は無理なのか!
唖然と、明日に引き起こされる惨劇を想像し青褪める雄介だが白那の無言の圧力に屈し、ふらふらと亡霊のように立ち上がり、誘導されるがまま教室を後にした。
残った教室で暴動のような大声が響き、色々な罵詈罵声が響き渡ったのもしょうがないといえばしょうがないかった。
「ううっ、マジで明日は生きてないかもしれない」
戦々恐々で怯えながら歩む雄介が連れてこられたのは教材が集められた資材質ではなく、何故か鍵が開けられていた屋上だった。
「えっと・・・・雪村先生。なんで屋上に?」
「それはユースケ君に手伝って欲しいことがあるからよ」
背後でバタンと扉が閉まる音と共にリズ先生が妖艶な笑みを浮かべて佇んでいる。よく見れば屋上には五人の教育実習生達全員がいた。
全員が雄介の周りを囲み、それにあわせるように屋上に描かれた文字や線が光り輝く。
巨大な五芒星が作り出され、その中心で雄介が顔を青褪める。
「せ、説明してくれませんか?」
「ええ、説明してあげるわよ。向こうの世界でね」
「む、向こうの世界?」