淫魔界にようこそ 19
そして雄介はビルを出た後で口に何か心地良い感覚に気付いた。
「何だろう…口の中が気持ちいい…」
そう思っていると周りの人達が雄介をチラッと見てはクスクスと笑みを浮かべてたのだ。
「何だろう…」
雄介はすぐに自分の身体を見回す。
すると
「・・・あ〜ぁ!!!」
なんとズボンのチャックが全開になっていて中のパンツまで見えていたのだ。
再び雄介は顔を真っ赤にするとチャックを締めて全速力で家へと帰っていったのだった。
だがしかし!
この時、雄介がもし…
『何故、女性が倒れた僕をわざわざビルの中に入ったのか…』
『何故、女性があれ位で雄介に人工呼吸を施したのか…』
『何故、雄介のチャックか全開だったのか…』
と普段では絶対ある訳ない出来事が起こった事を頭に入れてたら…
この先の出来事が起きなかったかも知れない…
・・・・・・・・・
ノルティカとのキスの余韻に浸る雄介。
だが当然男子のクラスメイトにばっちし見られており
教室に戻った後に皆の強力な冷やかしがあったのは言うまでもなかった。
その後は特に何事も無く(上級生や同級生に質問や詰問されることは度々あり、死線も何度か掻い潜ったが)ようやく最後の授業、国語となった。
「ぜぇぜぇ・・・・」
「なんだよ、雄介。すげぇ息が荒いな」
隣の席の孝太が苦笑する。雄介は睨みつける体力も無く机に横伏せになっていた。
黒板の前では雪村白那さんが優雅な仕草で流麗な文字を描き、そのたびにクラスメイトはおろか、彼女の授業風景を見に来た廊下の学生や校長が溜息を漏らす。
「ここで人間失格の著者でも有名な太宰治ですが・・・・」
質問しようとした白那さんの言葉を遮るようにチャイムの音がなる。静かに教本をたたむ白那さんに生徒達の残念がる吐息が漏れたのは奇妙で可笑しなことだった。
普段ならば授業が終るというのは喜ぶことであり、決して悲観することじゃない。
「起立!礼!」
「ありがとうございました!」
授業終了の声と共に廊下に並んだ生徒たちは一斉に自分のクラスに戻り、教室の生徒たちもお互いに喋り始めたり、帰り支度を始めたりしている。
その中で白那さんは白い着物を優雅に揺らしながら机で横になっている雄介の側による。
ざわ・・・ざわ・・・ざわ・・・・ざわ・・・・
「秘森君。すいませんが、これから少し手伝ってもらえませんか?」