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井戸の怪異
官能リレー小説 - ファンタジー系

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井戸の怪異 9

復習がてら改めてルーチェから、依頼について詳しく聞くと。
まず、商人や巡礼者の旅に付き添って危険を退ける護衛。毛皮や爪牙、薬草や植物など様々な素材を狩り採り、集めてくる収集・採取。
そして、僻地や遺跡などから頼まれた物品を見つけてきたり、危険や異変が無いか調べてくる探索・調査。
定番とも言えるモンスター相手に戦い、素材を集めたり周囲の安全を確保する退治などがある。

「まぁ。武器を手に入れただけなら、さっき言ってた通り近場での採取メインでいいんスけど……」
「一式揃っちまったうえに、剣もだいぶ立派になったしなぁ……オススメとかあるか?」
「やっぱりここは、安全と経験を兼ね備えたお得な依頼……複数人による森での採取ッスね!」

この街は主街道と森との間に広がる草原に造られており、冒険者たちの実力によって依頼での活動場所は分かれていた。
デビーは武器や冒険に慣れるため、初心者向けである草原での採取依頼をソロで受けるつもりだった。
けど事情が変わったこともあり、ルーチェが薦めたのは危険度が上がるが旨味も多い、低級者向けの森林でのグループによる採取依頼である。
「グループか…」
考えたことがなかった。勇者に選ばれもしなかった者は誰にも相手にされないのがこの街の傾向だ。
グループを組めそうなのがペトルしか思い付かない。そのペトルも井戸の事件の後どこかに逃げてしまった。
 
「そうッスよ。装備を揃えるまではやっぱりソロが多いッスからね、いきなり仲間を集めたりは難しいッス」

――最近は勇者関連で、妙にピリピリしてたらしいッスしね。

「だから即席のクランを組んで、仲間を探しつつ経験と金を積んでいく。と……」
「デビーさんは草原の経験も無いッスから、逆にこういった即席クランをオススメするッス」

顔見知りがいないなら、いっそ初対面で集まる依頼を選べばいいという訳だ。
カッフェを飲み終えたデビーは、少し考えを纏めた後ルーチェに手続きを頼む。

「それじゃ、頑張ってきてくださいッスね! ……ほぉら! お前さんたちも、とっとと金稼ぎにいくッスよぉっ!!」

デビーに依頼票と待ち合わせ場所のメモを渡すと、周囲に屯っていた冒険者たちのケツを蹴り飛ばしながら少女は仕事に戻っていった。
朝食の代金をカウンターに置くと、男は待ち合わせ場所の門の前へと向かう。
活気の市場を抜けて東門に着くと、周囲には依頼を受けた冒険者らがグループを作っていた。
メモに書かれたマークの看板に向かうと、狩人のような動き易い装備の少女が待っている。
くすんだ赤毛を編み後頭部で纏めバンダナで覆う、急所のみをレザーメイルで守り厚手の上下を纏った可愛らしい娘だった。
短弓を背負い腰に剣鉈を差した姿から、彼女の戦い方が透けて見えている。

「隣、失礼するぞ。……そっちも森での依頼、でいいのか?」

依頼票を見せながら歩み寄ると、デビーに気付いた少女は笑みを浮かべて応えてくれた。

「えぇ、私もその依頼を受けてきました。よろしくお願いしますね、お兄さん?」

スラリと伸びた健康的な脚が眩しい彼女は、草原で経験を積んだ為こっちに来たらしい。
狩人の家の末っ子だという少女は、アネモネというそうだ。
あとから来た男女2人組の冒険者とも簡単な自己紹介を交わすと、デビーたち4人は門の外へと向かう。

草原に生息する普通より体の大きい動物に似たモンスター、グラス・ラビットやラージ・クロウを遠目に見つつ森へと歩みを進めた。
今日探す薬草が採れる辺りでは、大きいネズミやハチなどのモンスターが出る。
ラージ・マウスは草原にも居るらしいからアネモネから実際の習性などを聞きつつ、デビーはロングソードを構えて警戒しつつ森へと踏み込んだ。
草原に近い辺りは木の間が広く、視界が比較的開けているため歩き易い。
ときたま立ち木の側に踏み込もうとした時に根っこからフォレスト・ラビットが飛び出してくるが、地面や幹にぶつかって動きが止まるので冷静に対処すれば問題は無かった。
そんなウサギや茂みから襲ってくるネズミを相手に連携を深めつつ進むと、やがて森が深くなってきて目的地に近づいているのが感じられる。
先輩たち曰くそろそろリトル・ビーの縄張りに近いため空へと警戒も高めた方が良いらしいので、アネモネに索敵に集中してもらいつつデビーたちは周囲を固めた。

「ちょっと頼りないかもしれないけどさ……お前さんを庇うくらいは頑張るから、背中は任せたぞ?」

いい年をした男の不器用な笑顔に、アネモネは噴き出しそうになりつつ余分な緊張は解れている。
先輩2人にからかわれつつも真剣に森の中を進んで行き、ハチに氷刃を飛ばしたりして撃退していった。
目的の薬草の群生地に到着したら、アネモネと交代でデビーは先輩から薬草の採り方を習う。

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