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井戸の怪異
官能リレー小説 - ファンタジー系

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井戸の怪異 8

「相変わらずだな、ルーチェ」
「で、その装備どうしたんっスか?」
「ちょっとした伝があってな。それより看板娘らしい事もしてくれよ」
「へへ、そうっスね。何にします?」
「豚肉ソテーとりんご酒だ」
「豚ソテーとりんご酒、まいど!」

元気にスカートとポニーテールを翻して去っていく。ついでに胸も揺れる。
気の良い弟分のような口を聞くが、彼女は間違い無くここの看板娘だ。
明るく人懐っこい性格と健康的な魅力の詰まった肢体で、この街の男どもを毎日のように惹きつけている。
ちみっこい頃からちょこちょこと後を着いてきたルーチェを、デビーはそれなりに気に入っているのだ。
彼女に頼れる兄貴分だと思ってもらえるように、一線を越えずにいたからこそ無力さに耐えられてたのかも。

「はぁい、お待たせしたッスね! 豚ソテーとりんご酒、付け合わせの蒸かし芋ッス」
「おぅ、ありがとうな。 ……一段落ついたらカッフェ奢ってやるから、ちょいと相談に付き合えよ」
「やったぁ〜っ、ゴチになるッスよ!」

湯気の立ち昇る木の皿を前に、まずは酒で喉を潤す。僅かな炭酸の刺激と林檎の風味が、起きぬけの頭をスッキリとさせた。
ナイフでメインの豚を切り分けると、火酒の香りが広がった。一口頬張ると胡椒の辛味と岩塩の甘味が、口いっぱいに満ちていく。
後味が消えないうちに、芋を頬張る。ねっとりとした舌触りのあと、ホクホクした旨味が豚と合わさって至福の時間を提供してくれた。
豚・芋・豚・芋、ときどき酒。昨夜消費したエネルギーを補うように、おかわりまでして腹を満たす。
食後に2人分のカッフェを注文すると、一仕事終えたルーチェがカップを両手に隣に腰掛けた。

「どうぞ〜っ、ご注文の品をお持ちしたッスよ。……コレは店長から。2人で摘んでくれ、って言ってたッス!」
デビーの前に片方を置くと、制服の胸元を押し上げる豊乳の谷間から小袋を取り出す。
中にはキャラメルでコーティングされたナッツが詰まっており、2人はありがたく頂くことにした。
彼の分は甘さ控えめのミルクたっぷり。少女の方は甘みもミルクもたっぷりの、好みに合わせたトッピングである。

「……ふぅ〜っ。この一杯が最高ッスね! それで、相談ってなんなんッスか?」
「それなんだがな。……まぁ知っての通り、俺も剣を用意するのが精々だった。薬草採るついでに、弱いのを相手するつもりだったんだが……」
「装備が整ってしまったから、依頼やモンスターについて知りたい。ってところッスね?」

二人は様々なモンスターについてやり取りをした。
特に気になったのはある洞窟に住み着いた巨大な蜘蛛だ。ただ、巨大なだけでなくある奇妙な習性を持つらしい。それがなんなのかはよくわからなかった。
デビーはなぜかそれが妙に気になる。
 
「なぁ。その蜘蛛についてもう少し、こう……何がしかの情報は無いのか?」
「そうッスねぇ、う〜ん……たしか噂話で「ニンフみたいな習性だった」って言ってる冒険者がいた。とか、聞いたことがあった気もするッス!」
「ニンフねぇ……しかも、だいぶあやふやな噂じゃねぇか」

ニンフと言えば、御伽話でも語られる水辺の精だ。
人間に恋をした妖精は相手と共に暮らし、身の回りの世話や才能の開花を手伝ってくれる。
だが恋した人間が一時でも他の相手に心を奪われてしまえば、彼女らは涙と共に消え去りその後には多くの不幸が降り注いでくるのだとか。
――それに関係しているなら、使い魔か番のような関係を結べるが縁が切れたら食い殺される、とかだろうか?
隣でルーチェが「文句あるッスかぁっ?」と騒いでいるなか、デビーはそんな風に推論を深めていく。

「……まぁ、今すぐどうにか出来る相手じゃ無さそうだし。依頼についても教えてくれるか、ルーチェ?」

むくれる少女の頭を撫でくりまわしてやると、少し嬉しそうな顔でキャラメルナッツを摘みつつ説明してくれた。

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