PiPi's World 投稿小説

井戸の怪異
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 -1
 1
の最後へ

井戸の怪異 1

勇者一行が勇ましくバルダナを出発するのを街の人々が見送っている時、街の反対側でぽつんと井戸の底を眺める男がいた。
見送る気になどはなれなかった。
男の心の中には怒りと嫉妬と羨望が渦巻いていた。
「何が勇者だ…ついこの間まで俺と何も変わらねー、普通の奴だったじゃねーか。
それが急に王様に呼ばれて今日から世界を救う勇者だ?
んでもって、王様から大金渡されてよ…畜生…なんで俺じゃねーんだよ!?」

ボカッ!
井戸の側面を蹴っても爪先が痛いだけで鬱屈した気持ちは晴れない。
それだけではない。蹴った振動でデビーの剣が跳ねて井戸に落ちてしまう。
「あっ俺の剣が!」
デビーの貯金の全額だったロングソードはあっというまに濁った水の中に沈んで見えなくなってしまった。
「どうしよう…」
そこにペトルが駆けつけてきた。井戸に何か落ちた音を聞き付けたらしい。
彼とデビーは顔見知りではあるがあまり評判がよくない男だった。山賊のような奴等とつるんでいる。
今回もペトルの後方に雰囲気の良くない男達が付いてきていた。
(昔はここまで雰囲気が悪くなかったんだがなぁ…)
ペトルがこんな風になったのはデビーと同じく勇者に選ばれなかったからである。
だが、昔がどうであれ正直あまり関わりたくはなかった。デビーは井戸の中の剣を諦めて立ち去る。
「惜しいことをしたな。あいつらが居なくなったら見に行くか…」
ペトル達は井戸の中をちらちらと覗き込んだりしているが剣は沈み込んでしまっている、彼等に見えるはずがない。
デビーは落としてしまった剣が気になって、離れることが出来なかった。
「早く居なくなってくれよ」
木の陰に隠れて様子をうかがう。ペトル達はまだ井戸の中を覗き込んでいて、何やら話をしているようだった。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す