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井戸の怪異
官能リレー小説 - ファンタジー系

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井戸の怪異 17

馴染みの店だし、抱きしめられているのがデビーだと気付いている客も多くて、彼に何があったのかと思う客もあちこちにいた。
抱きしめられている間も、ルーチェの母が客の注文に答えたりする元気な声が何度も聞こえてきた。彼女もルーチェと似た美人で切符のいい女で、昔は看板娘として鳴らしていたのだ。
こうしてルーチェを独占する形になっても怒ってこないのも、デビーの事も小さいころから知っているからというのが大きいのだろう。



「すまねぇ。ルーチェ。心配かけた」
「落ち着いた?」
「…ああ」
まだ辛そうだったが、どうにか気持ちの落ち着いたデビーはゆっくりとルーチェから離れる。
「ちょっと待っててね」
ルーチェが離れた後、置いてあったりんご酒を一口飲むと、いつもよりほろ苦かったのは今日の出来事のせいだろう。
「お待たせ。お父さんから」
「おいおい……いいのか?」
ステーキを置かれ、思わずデビーはルーチェの父親の仕事場である厨房を見る。
デビーの視線に気づいた彼は、彼に向かって優しく頷いた。無口だが、情に厚い人物なのだ。
「すまねえ…いただくぜ」
夜も更け、客の少なくなった酒場でデビーは好意に甘え、ステーキを食べた。
その思いやりのおかげか、今日のステーキは言い表せないほど美味しかった。



「ねえ、デビーさん…」
「お前、店はいいのか?」
「お父さんとお母さんは、許してくれたから。今日は一緒にいてあげる」
何故か、自宅に戻るデビーにルーチェもついてきていた。その温情に、彼は涙ぐみそうになるのを懸命にこらえた。さっきすすり泣いたばかりだが、何度も泣いていたら流石に格好悪いし心配かけると思ったのだ。
「何もないところですまないな」
「いいッスよ。それよりデビーさん…あたし…」
ルーチェが抱き着いてきた。
「あたし、デビーさんの事が好きだったっス。あたしじゃ…だめ?」
「え?ルーチェ?」
不意打ちの告白に、デビーが驚いているとルーチェが続けた。
「最近、ソロで冒険しているのを見てて、心配になって……そして、今日戻ってきたデビーさんをみて、あたし、自分の気持ちに気づいたっスよ。こんな時に告白なんて卑怯かもしれないけど、でも、あたし…」
「ルーチェ……」
真摯な告白をするルーチェを見て、彼女がどれほど想ってくれていたのか、今さらながらに気づき優しい笑みを浮かべるデビーに、そのまま、ルーチェが唇を寄せてくる。

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