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井戸の怪異
官能リレー小説 - ファンタジー系

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井戸の怪異 16

植物の壷の中で素っ裸の山賊達がもがき、そしてみるみるうちに縮んでいき吸われていった。
そんな光景が忘れられるはずもない。
もしかしたら未だに行方がわからないペトルも同じことになっているかも知れない。
彼のことが気になってきていた。
「デビーさん、今は何も考えなくていいっス。
悪事を働いたんじゃ無いんでしょ?」
ルーチェは、デビーの頭を豊かな胸に抱き込んだままで、優しく声をかける。
「ああ……
悲惨な物を見ただけだ…」
何とかそれだけを言ったデビーを、ルーチェがしばらく抱きしめていた。
最初は冷やかしの一つ二つも周りから飛んでいたが、デビーのあまりに重い雰囲気に、彼とルーチェを見守る視線ばかりになっていた。
「はい、りんご酒。ルーチェ、しっかり慰めてあげなさいよ」
娘に代わってりんご酒を持って来た、ルーチェの母の声だ。
デビーは、今はただ抱きしめてくれるルーチェの優しさが、とにかく有難かった。
ルーチェも、前々から恋慕していたデビーの異様に打ちのめされた姿を見て、気がついた時には思いっきり抱きしめていたのだ。
兄のような存在でもある彼を思いやる気持ちに、好きな人を想う気持ちが入り混じり、心配と愛情が強くなる。
「デビーさん、今は何も考えなくていいよ…」
抱きしめたまま、ルーチェは優しく言う。
まるで慈母に抱きしめられているような気持ちになったデビーは、ぽつりと言った。
「畜生……あいつら、山賊とはいえ骨も残らず殺されちまったんだ…」
「まあ!そんな……」
冒険者達が、仲間を喪ったりして悲しみの酒をあおっている姿は、こんな酒場では時々あることだ。
悲惨な目に遭って、何とか戻ってこれた冒険者が、気晴らしのやけ酒を煽る姿もありふれたもの。だが、それにしてもデビーの様子は暗かった。
デビーが最近はソロで活動している事はルーチェも知っていた。
クイツボ退治で活躍して、名前が上がりつつあることも。おそらくそこで誰かが犠牲になったのだと、ルーチェは察した。
デビーはついにこらえきれず、すすり泣き始めた。
ルーチェの豊かな胸の中で、涙でエプロンを濡らすデビーを、ルーチェはただ優しく抱きしめていた。

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