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Absorption
官能リレー小説 - ファンタジー系

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Absorption 4

だが、美雪はまだ眠れずにいた。それほどまでに先ほどの噂話が尾を引いていた。
「(私、吸血鬼にさらわれちゃうの?でもそうだとして、なんで私を?)」
窓の外には月が出ており、光が部屋の中へと差し込んでいた。いかにも不吉なことが起きそうな夜空であった。
「(やめよ、これは噂だ、だって幽霊とか吸血鬼とかなんて、結局は作り話なんだし・・・)」
そう自分に言い聞かせ、目を閉じる。いつの間にか彼女の意識も夢の中へと落ちていった。


差し込んでいた月光が遮られた。だがそれは雲によるものではなかった。
窓の外から、理事長が部屋の中を覗き込んでいたのだ。この部屋が寮の3階であるにもかかわらず・・・。


理事長が窓に手を触れた瞬間、掛けられていたはずのカギが外れ、窓が開かれる。
そのまま部屋の中へと侵入する理事長。
「ふふふ、今日は皆で固まって就寝のようだな、まあ寮生なら消灯時間後のおしゃべりは楽しみの一つだろうし、これくらいは黙認してあげよう」
ゆっくりと彼女らの方へ進んでいく。そして中心で寝ていた美雪の枕元までやってきた。
「小泉 美雪、君を迎えに来たぞ」
にたりと笑うと彼女の布団をゆっくりと下げた。そして優しく抱き上げる。
窓のほうまで戻ると、そのまま勢いよく飛び出していった。

それと同時に、美雪の隣で寝ていた恵梨香が目を覚ます。
「・・・トイレ・・・」
目をこすりながらも隣を見ると、友人がいないのに気づく。
「美雪もトイレ?」




寮の窓から飛び出した理事長は、礼拝堂へと飛んで行く。解放されていた窓から侵入すると、堂内の床に降り立った。
抱いたままの美雪の顔を見やる理事長。彼女は可愛らしい寝息を立てたままだ。
「さあ、君が見たがっていた地下に連れて行ってあげよう」
そう言うと、礼拝堂の地下道入り口まで向かう。すると下がっていたはずの鉄格子がひとりでに上がり、奥へと進めるようになった。そのまま地下へと降りていった。

下まで降りると、そこは広い空間となっており、部屋の中心にはふたの空いた棺があった。そしてその奥には割と質の良いベッドも置かれている。理事長はそのベッドまで行くと、美雪を優しく横たえさせた。

「ん・・・」
ゆっくりと目を開ける美雪。あたりを見回す。
「ここ・・・は?」
「目を覚ましたかね?小泉美雪」
隣を見ると、そこには理事長が座っている。
「理事長?どうして?」
「ここは礼拝堂の地下だよ、わが一族の霊廟だ」
霊廟、という言葉を聞いた瞬間、震えあがる美雪。
「そんな・・・どうして!?」
部屋の中心に置いてある棺にも気づく。だが、一つおかしなこともあった。
「棺、一つしかない?」
一族の陵墓、という割には肝心の棺が一つしかない、しかもそのふたが開いている、つまりは・・・
「ここまでくれば、私が吸血鬼であることは君も気づいているだろう?」
そう言って微笑みかける理事長。
「そんな・・・理事長が・・・きゅう・・・けつき?」
「もう一つ教えてあげよう、世間的には私が三代目となってはいるが、実際には初代から変わっていない。つまり私は100年以上前から生き続けているのだ、驚いたかね?」
「どう・・して?」
「吸血鬼はその容貌を自由に変化させられる、だから若く見せたり、老人の姿になったり、と言ったことができるのだ。それで公的機関をごまかしてきた、ちなみにこれが私の20代の頃の姿だ」
そういった瞬間、見る見るうちに理事長の顔が若返っていく。美雪の目の前に美青年が姿を現した。
「私とてかつては人間だった、だからこの容貌は紛れもない私自身の姿だよ」
そう言って微笑みかける理事長。
「で・・・でも、どうして昼間でも外に出られたんですか!?吸血鬼って本来太陽が苦手なはずじゃ・・・」
「それは半分当たっているよ、小泉さん」
そう言って指を立てる理事長。


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