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Absorption
官能リレー小説 - ファンタジー系

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Absorption 1

『吸血鬼』

それは、その名の示す通り人間の血を糧として生きている存在である。彼らは日の光を忌み嫌い、日中は自らの棺の中にこもり、そして夜になれば這い出し、外の世界を徘徊する。そしてたまたま目についた哀れな『犠牲者』に襲い掛かり、その生き血を吸うのだ。

古くはブラム・ストーカーの著書『ドラキュラ』などで数多の人々に知られており、また非常に恐ろしい存在であるとも認知されている(実在を認めるか否かはともかく)。

しかし、彼らの命を繋ぐものが何も『血』に限らないことはあまり知られてはいない。

長野県 某所  私立 霞原女学院

明治後期に設立されたこの女学院は全寮制であり、またミッション系のスクールであった。そのため校則はそれなりに厳しく、また女学生は男子との関わりを制限されていた。

今年入学したばかりの小泉美雪は、早くもこの束縛された学園生活に対し閉塞感を感じ始めていた。
「はあ、休日も外に出られないなんて・・・」
窓の外を見ながらため息をつく美雪

「これじゃあ、かごの中の小鳥みたい・・・パパとママはなんでここに入学させたんだろう・・」
元々彼女は、県を出て、東京の共学の有名校に進むことを望んでいた。中学時代の学力はそれなりに優秀であったため、中学校の教員らも受験に支障はないと考え応援はしてくれていた。しかし、都会嫌いの両親に猛反対され、しぶしぶこの学院を受験せざるを得なかったのだ。
「私も東京に出てもっといろんな人と会いたかったし、それにいろんな刺激で毎日が楽しかっただろうに」
そのとき、背中からポンと叩かれた。後ろを向くと、クラスメイトの近藤恵梨香が立っている
「美雪!!元気ないじゃん!」
「恵梨香ちゃん・・・恵梨香ちゃんは今の生活に満足してる?」
「へ?そうだね・・・・」
恵梨香は少し黙り込んだ。

「あたしも正直、この束縛された状態に我慢できなくなってきたね、だって交際禁止ならまだしも、男子と話しちゃダメとか、いくら何でもいきすぎじゃない?そのくせスカート丈は短いんだから・・・」
彼女のいうように、霞原学院の女学院は徹底した純潔性を保たんが為に、異性との関りを厳しく制限していた。これはこの学園がミッション系であることも起因していたのだが、ここの理事長(ちなみに男)がかなり厳格なクリスチャンであり、徹底して不純異性交遊を排除しようとしているのだ。
「今の理事長でしょ、ここまで厳しい校則にしたのは・・・」
教室の壁に掛けられた校則と言う名の呪縛を睨みつける恵梨香。
「でも、あの校則って確か設立当初からあるんでしょ?」
「ってことは、少なくとも親子三代はつづいてるってことかな?だとしたら最悪な一族経営ね、あたし等の代でつぶれてくれないかな?」
「さすがにそれは・・・」
苦笑いする美雪。

午後18時

退屈な学園の一日がようやく終わり、学生たちはそれぞれ寮へと戻っていく。美雪はと言うと、礼拝堂へと向かっていた。礼拝堂の中には書物保管庫があり、まれに神学の教材として持ち出されることがあるのだ。それを保管庫へと戻しに行くのである。本来なら担当教員の仕事であるのだが、たまたま電話が入ってしまったため、彼女が代わりに行くことになったのだ。

礼拝堂に入ると、屋内、そして5月だというのに少し寒気を感じた。
「ここって、確か地下にお墓もあるんだよね・・・」
仮にも一族経営の学園のため先代の廟を兼ねているとも聞いていた。そしてそれは礼拝堂の地下にあるというのだ。

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