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Absorption
官能リレー小説 - ファンタジー系

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Absorption 2

「早く、しまって戻ろう・・・」
保管室のカギを開け、書物を棚に戻す。すると、礼拝堂の方でなにか金属音が聞こえた。
「!?」
ここには自分しか来ていないはずだ、ましてやドアを開ける音も聞こえていないために誰かが入ってきたとも考えにくい。
『この奥には先代の墓がある』
嫌な考えが頭をよぎった。
恐る恐る礼拝堂に戻ると、祭壇のさらに奥のほうを見やった。
そこは地下室への階段が続いている。しかし、鉄格子が下りたままで、誰かが通れるような状態ではなかった。


恐る恐る、鉄格子まで近寄ってみる。中を覗き込んでみたが、先は真っ暗だった。
「(気のせい・・・かなあ?)」
ほっと溜息をついた瞬間、
「この地下に興味がおありかな?」
不意に後ろから声をかけられる。
「ひっ!?」
慌てて振り向くと、目の前に立っていたのはこの学園の理事長本人だった。
「り、理事長!?」
「ああ、すまないね、驚かせてしまったな・・・」
「い、いえ!すみません!私の方もこんなことをしてしまって・・・本当にすみません!!」
好奇心だったとはいえ、人様の墓を覗き込んでしまったことを、美雪は恥ずかしく思った。
「いやいや、気にすることはない、君たちのような若い子だってこういう歴史的な建造物にはもっと興味を持ってもいいんだよ?」
厳格、とは聞いていたが、実際に会って話してみるとこの理事長は意外と穏やかな紳士だった。
「(もう60近いって聞いてたけど・・・)」
目の前にいるこの男性からは、とても老いを感じられなかった。(多くても)40代と言ったところで信用してしまいそうな、そんな容貌だ。

「君は確か、今年入ったばかりの小泉美雪さんだね?」
「え、ええ!そうです」
いくら生徒数が少なくなっているとはいえ、一人一人の顔と名前をちゃんと記憶していた理事長に、驚きを感じる美雪。
「色々厳しい規律は多いかもしれないが、頑張って教養ある立派な淑女になってくれたまえ、期待してるよ」
美雪の肩を掌でぽんぽんと叩きながらにこやかな顔を向ける理事長。
「さ、今日はもう寮に戻りなさい、夕食に送れるぞ?」
「は、はい!ありがとうございます!」
そう言ってお辞儀すると、踵を返し出口へと向かう美雪。
だが、彼女は気づいていなかった。理事長が頭を自分の肩をたたいた際に、目にもとまらぬ速さで彼女の首にひっかき傷を入れていたことを、そしてそれがまったく痛みを伴うものではないことを・・・。
「ふふ、小泉美雪、可憐でまだ穢れていない・・・長い間私の待ち望んできた子がついに来てくれたか」
そう言ってにやりとわらう理事長。

寮に戻った美雪はどうにか夕食に間に合った。
束縛の多いこの学園においては数少ない娯楽の一つである食事のメニューも、肉や魚類は極力抑えられ野菜が主となっている。しかし、美雪はあまり肉類を好まないため食事に関しては特に不満を感じていなかった。
「ねえ小泉さん」
向かいに座ったクラスメイトの一人である唐住宮子が話しかけてきた。
「?なあに?」
「この学園の噂ってもう聞いてる?」
「噂?」
突然振られた話題に首をかしげる美雪。
美雪の隣に座っていた恵梨香も口を開いた。
「設立当初から10年毎に起こっていた怪事件のことね?」
「どんな話なの?」
「それはね・・・」
宮子は語り始めた。


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