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賢者ルシャード
官能リレー小説 - ファンタジー系

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賢者ルシャード 1

「僕は今、新しい魔法の勉強中なんだ。
それでね、実験相手を探してるんだよ。
うん。活きのいい、健康な姉さんみたいな人がいいんだけどね。あ、嫌なら、他に実験につきあってくれる人、紹介してくれない?」
十五歳の少年ルシャードが休暇で館に帰宅している姉に、相談を持ちかけている。
最近、普通の学校の勉強では飽きたらず、魔法術学に興味を持っているらしい。
同じ十五歳の頃に両親から無銘の剣をごねてプレゼントしてもらった。
今では、王国騎士団の百騎長の肩書きを持つ姉としては、かわいい弟の将来が楽しみではある。
「美人で強くてかっこいいおねぇちゃんじゃなくちゃどうしても嫌なら、つきあってあげるけど」
「……あ、せっかくの休暇でゆっくりしたいよね。他の人を探してみるよ、ごめん」
「ちょっと待ちなさいよ。暇だし、いいよ」
部屋から出て行こうとするルシャードを呼び止めて、にっこりと笑う。
任務で一ヶ月以上、実家に帰ってなかった。
他の騎士たちは宿舎で暮らしていて、まめに実家に帰る者は少ない。
それでも彼女は弟に会えるのが楽しみで、休暇が取れると実家に帰っている。



弟ルシャードに見せる笑顔をもし騎士団の誰かが見たなら、とても驚くだろう。
騎士団の若き武芸師範である彼女は、とても厳しく部下を鍛えていた。
鬼隊長とあだ名をつけられるほどである。
戦いで自分の腕が未熟であれば、自分が命を失うだけではなく他の仲間も危機に陥ることになると部下たちに教えている。
戦いとなれば誰よりも先に突っ込んでいく勇猛果敢な女騎士なのである。
部下たちは敬意と親しみを持って彼女に従っている。貴族階級の上官たちより人気がある。
彼女に恋愛の噂ひとつないのは、つまり異性よりも同性が好みなのだ……と人気をやっかむ者たちが陰で言っているのも彼女は知っていた。
彼女はまったく気にしていない。騎士の誇りを持って任務を遂行してきた。
誰に何を言われても恥じることなどない。
異性に興味がないのではない。
一途な恋心をずっと抱えているだけだ。
弟ルシャードが好きすぎて、他の男性には目もくれないと言うだけの話なのである。
最近、少し背ものびた。学校の成績は優秀で、それでも遊びより魔法術学に夢中の男子。
本人は気がついてなくても、とてもモテるはずで姉はとても心配なのである。
今週は両親が旅行中。
騎士団の宿舎にルシャードを連れて帰りたいぐらいの姉なのだった。
しかし騎士団の若い女戦士たちがルシャードを見つけたら、どうなるか想像できる。
すぐにちょっかいを出してくるにちがいない。
いくらかわいい弟に紹介してほしいと言われても、それはできない。
かといって、弟が彼女ができたと知らない娘を家に連れてきたら泣くかもしれない。



魔法の実験という話に多少は嫌な予感がした。
しかし、ルシャードと一緒にいられると思うと誘惑に勝てなかった。
「おねぇちゃんは、魔法ってよくわからないんだけど……大丈夫?」
「うん。たぶん、大丈夫」
「たぶんなの?」と言いながら、弟の魔法について説明を聞いている。
魔法の理論を聞いてもよくわからない。
剣技の修練をしていた頃のことを思い出すと、剣の話を誰かに話したくてしかたなかった。
ルシャードもそんな時期なのかなと思い、笑顔でうなづきながら聞いていた。
その説明に専門用語のように呪文がすでに混ざっていて、説明が終わる頃には……。
女騎士シルヴィアはベットのはじにすわって、ぼんやりとしている。
「じゃあ、質問するよ」
「はい……」
「恋をしてますか」
「はい……」
「どんな人なの?」
「すごくかわいい……」
「かわいい?」
「はい……」
「年上、それとも年下ですか?」
質問を「はい」か「いいえ」で答えられるものから、少しだけむずかしくしてみた。
「……年下です」
「その人の名前を教えてくれますか?」
少し間があってから、ゆっくりと答えてしあわせそうにシルヴィアが微笑を浮かべた。
「ルシャード・ギルセイバー」
催眠の魔法をかけた弟は驚いて、姉の顔をじっと見つめた。
ふぅ、とため息をついて魔導書を開く。
「よく聞いて。
ルシャード・ギルセイバーの名において命令する。
そう言われたら、あなたは催眠にかかり、命令には絶対に服従する。
わかったら、はいと返事をするんだ」
「はい」
ルシャードはゆっくりと呪文を詠唱した。

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