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賢者ルシャード
官能リレー小説 - ファンタジー系

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賢者ルシャード 2

「ん……あっ、私、もしかして寝てた?」
「おはよう、姉さん」
ベットから身を起こしたシルヴィアにルシャードが笑顔で声をかけた。
「やっぱり、疲れてたんだね。すごくよく寝てた。むずかしい話をしてごめん……」
「寝たら、なんかスッキリした。魔法の実験をするんでしょう?」
「それより、もう夜だから何か食べようよ」
「えっ、そんなに寝てたの?」
「うん。今日は何を食べに行く?」
両親が旅行に出かけている間は、好きなものを食べられるようにまとまったお金を置いていった。
姉が帰ってきても大丈夫なように、両親は多めにお金を置いていってある。
シルヴィアは料理なんてしたことがない。騎士団では宿舎に食堂がある。
「じゃあ、ルシャード、西通りにできたお店に行ってみない?」
「おいしいといいね」
「たぷん、おいしいよ」
「たぶん?」
「初めて行くお店だから、行ってみないとわからないんだけどね」
シルヴィアが少女のようにくすくすと笑った。



ルシャードは催眠の魔法で聞いてしまった姉の恋心のせいで、少し落ち着かない。
「おいしいね。あれ、あまり食べてないじゃない」
スパゲティをほおばり、果実酒をがぶ飲みしているシルヴィアが声をかける。
もともとルシャードは少食なほうで、姉はいつも気にしている。
「ん、どうしたの?」
「姉さん、ソースが口のまわりについてる……」
「あら、なんか宿舎暮らしをしてたら男っぽくなったかもね」
シルヴィアが照れながら苦笑し、ハンカチで口もとをぬぐう。
同じ年頃の女性たちにくらべて、姉シルヴィアは無頓着な気もする。
それでも化粧などせず、着飾ったりしなくても美人なほうだとルシャードは思う。
そんな姉が弟のことが好きで他の男たちには興味がないのは、正直もったいない気もする。
「姉さんは結婚したりしないの?」
「ん、なんで?」
「騎士団なら、騎士の人とかとつきあったりしないのかなって……」
「そういう人もいるけどね。まだしないかな」
「仕事が忙しいから?」
「そうね。それに結婚したら騎士団から引退する女性が多いからね」

結婚して家庭に入り、復職する機会を失ってしまう女性はかなり多い。
産む性であることも関係している。
出産、育児などで離職している間は、他の誰かがその役目を任されている。
同じ役目に復帰するということは、すなわちその間に空いた役目を任されていた人が、他の役目に移ることになる。
二人、三人と産んで何度も職を離れる可能性も考慮した責任の役目に移ることを受け入れなければ復職できない場合がほとんどである。
騎士団では結婚前に妊娠して、それがきっかけで結婚する場合も多い。
結婚した女性が騎士団で別の立場の役目を任される復職を希望せず、そのまま辞職することはきわめて当たり前のような雰囲気がある。
シルヴィアはまだ若い弟にこうした詳しい事情は説明しなかった。

「結婚しても騎士を続けたい?」
「子供の頃から憧れてなった騎士だからね」
「たまに心配になるんだ。騎士って危険な仕事なんだよね……」
「心配してくれて、ありがとう」
離れて暮らしていても自分のことをルシャードが心配してくれているのがうれしかった。
「いつかは辞めるけどね。杖をついて馬に乗れないお婆ちゃんが、剣を持って騎士だと言っても、悪党どもになめられるだけだし」
シルヴィアはそう言って笑った。

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