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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 100


「一体何が起こっているんだ…」
その頃、セイルの父クルアーン・オルハンは王宮内の一室で頭を抱えていた。
事務屋だが一応近衛隊に所属している彼は、あの得体の知れない黒覆面の男達が王宮に攻め込んで来た時も、いつも通り城で勤めに励んでいた。
オルハンら事務方はほぼ全員無事だったのだが、実際に警備に当たっていた実働部隊の方は謎の黒覆面集団と戦闘となり、かなりの死傷者を出したらしい。
特に王族の身辺警護に当たるエリート部隊、近衛剣士隊は全滅に近い被害だというが詳しい事は良く解らない。
国王以下、王族達の安否さえも解っていない。
なぜならオルハン達は敵の姿を見るや否や騎士の誇りである剣を放り出し、敵と一戦も交える事無く投降してしまったからである。
そしてそのままこの部屋へと連れて来られた。
部屋には彼らと同じく宮仕えをしていた武官文官が監禁されている。
さすがに王宮の全官吏を収容出来る部屋は無く、何ヶ所かに分けられていた。
この部屋はその中でも大きい方で200人はいるだろうか。
出入り口には変な槍のような武器を持った黒覆面の数名が常に立ってこちらを見張っている。
見張りは常時10人弱といった所だ。
全員で一斉に襲い掛かれば勝てそうだが、そんな事をする者は誰もいない。
そういう事をするヤツは既に死んだ。
残ったのは従順な連中だけだ。
それにヤツラが持っている謎の武器…あの近衛剣士隊も全く歯が立たなかったという。
この国で最強の集団と言っても過言ではない連中をいとも容易く殺傷した…ヤツラは一体どうやってあんな武器を手に入れたのだろうか?
いや、そもそもヤツラ自体が一体何者で何が目的なのだろう?
とにかく今の時点では解らない事が多すぎた。


一方、黒覆面集団…すなわちバム、ブム、アリー達はというと…
披露宴会場を襲ったアリー隊と衛士府を襲ったブム隊は“成すべき事”を成した後、王宮に入りバム隊と合流した。
「フヒヒ…成果はどうだったかな?ブム、アリー」
「フヒヒヒヒヒ…」
「ここに…」
二人は部下に指示して大きな麻袋をいくつか持って来させた。
紐を解いてひっくり返すと中から何やらゴロゴロ転がり出て来た。
人の頭部だった。
ブムはその中の一つを足で踏み付けて言った。
「フヒヒ…これが衛士府総監アジーズ・ムサルマーンの首なんだな!」
アジーズ・ムサルマーン…連続娼婦殺害事件の時、セイルが直談判に行った衛士府のトップである。
「ブヒヒヒヒヒ!!こいつ最期に何て言ったと思う?剣を投げ捨てて涙目で『金ならいくらでも出すから助けてくれぇ〜!』って…ブヒヒヒヒヒ!!あれは傑作だったんだなぁ〜!!」
「ブヒヒヒヒヒ!!何そのテンプレートなセリフ!?超ウケるんだなぁ〜!!」
双子はひとしきり爆笑するとアリーに向き直って言った。
「…で、お前の方はどうだったのかな?」
「そっちは大漁だったはずなんだな。なんせ都中の貴族達が集まっていたんだものな〜」
「……」
アリーは片膝を付いて床に転がっていた一つの首を両手で丁寧に拾い上げて言った。
「これが内務大臣ムスタファ・ハシーム…以下、国政に携わっていた上級貴族達の首です」
それに対してバムとブムは不服そう。
「…ふ〜ん、意外と少ないんだな…」
「…確かに予め指示しておいた者達の首は全てあるようだが…フンッ…犠牲は最小限に抑える…ってか?つまんねーヤツなんだな」
「…申し訳ありません。気分が優れませんので、少し休ませてください…」
そう言うとアリーは力無い足取りで去って行った。

「…なぁ、ブムよ。あの男、思ったより肝っ玉の小さいヤツだったみたいなんだな」
「まったくなんだな、バムよ。決行前は“どうせ後には退けない身”とか言って意気込んでたクセにな〜。きっと実際に血を見て意気消沈しちまったんだな。軟弱なヤツめ」
「…ま、やるべき事はやってくれたんだ。それで良しとするんだな。それよりもブムよ、僕らにはまだ成すべき事が一つだけ残っているんだな」
「はて…?」
首を傾げるブムにバムはニッと笑って言った。
「ブムよ、玉(ぎょく)を取るまでがゲームなんだな」
「そういう事か…で、玉はどこに…?」
「後宮の一番奥で布団を被って震えてた所を見つけたんだな。今は正殿の一室に監禁してるんだな」
「フヒヒ…では行くんだな」
「フヒヒヒヒヒ…♪」
双子は不気味な笑みを浮かべながら玉…すなわちイルシャ王国国王アフメト4世の元へと向かった。

だが、国王の部屋の前で一人の女性が双子に立ちはだかった。
「お待ちなさい!バム!ブム!」
「フヒヒヒヒヒ!これはこれは叔母上ではないかな…いや失礼、第13王妃殿下とお呼びすべきでしたかな?」
「お久しぶりなんだな。ちょっとソコどいて欲しいんだけどな」
「いいえ、どきません!」
イルシャ王国第13王妃にしてバム、ブム、ジェムの叔母…ジャミーラは毅然として言った。
ヤヴズ・セムの末子である彼女はセムが歳を取ってから若い妾との間に産まれた子であり、従って双子達の叔母にしては若く、そして美しかった。
バムとブムはギロリとジャミーラを睨み付けて言う。
「叔母上、あんたは王の寵愛を一身に受けていながら…王の一番近くにいながら、父上を助けてくれなかったんだな!本来なら“殺すリスト”の一番上に名を連ねていてもおかしくない立場なんだな!」
「バムの言う通りなんだな!」
そう、実は彼らが殺害した貴族達は皆ヤヴズ・ワムの処刑に積極的に加担した者達。
つまり今回の騒動は双子の父の敵討ちという側面も持っていたのである。
…もっとも、大勢の無関係な者達まで容赦なく殺戮した事を考えれば同情はし難いが…。

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