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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 99

「…身内としては…セイル、よく逃げて来てくれた…よく生きて帰って来てくれた…ワシは嬉しい…嬉しいよ…」
「お祖父様…!」
孫が生きて帰って来た事を喜ばない祖父などいない。
二人はそのまま抱き合って泣いた。
「そういう事でしたか…」
アルトリアはフッと微笑んで呟く。
「どういう事?」
ヤスミーンが尋ねた。
ミレルが答える。
「大旦那様が坊ちゃまを殴ったのは坊ちゃまのためです。もし殴られなければ坊ちゃまはあのまま罪の意識に押し潰されてしまっていたでしょう」
そこへ、ナシートがフワフワと飛んで来た。
「ふぁ〜あ…なんか騒がしいわねぇ…ゆっくりお昼寝も出来ないじゃないのぉ…何かあったのぉ?」
のん気な妖精にアルトリアは溜め息混じりに言う。
「色々あったんだよ…お前が寝てる間にな」

「ちょっと!私は何の事情も知らないのよ!もう少し優しく教えても罰は当たらないわよ!」
何も知らない自分に対して少し含みのあるアルトリアの態度に自分を馬鹿にしてると感じたナシートはムッとする。だが、アルトリアはナシートをニートの穀潰しと罵倒してセイルが危険な目に遭ってたのに昼寝して咎める。
「黙れ、このニートの穀潰しが!セイル様は危険な殺されかけた時、昼寝してたお前にとやかく言う権利はない!」
「そっそれ本当なの!セイル大丈夫なの?」
セイルが殺されそうになったと知り真っ青な顔で心配するナシートにセイルは大丈夫だったとことを言う。
「アルトリアのお陰で、大丈夫だったよ」
「そうなの・・・・・・・(悔しいアルトリアに一本取られた!!)」
アルトリアのお陰で助かったと話すセイルにナシートは一言答えるが内心は悔しがる。

ウマルは厳しい顔でセイルに王都を出るのを進言する。
「さてセイルや、ヤスミーンさんやそこのフェアリーの娘さんの為にも、ここは一旦退くぞ。今の我々では賊たちを鎮圧は不可能だ」

ウマルの言葉にセイルは首を傾げて尋ねる。
「退く?退くとはどういう意味ですか?お祖父様…」
「一旦この王都を離れて安全な場所に非難する。早く使用人達に命じて荷造りを始めなさい。貴重品は持てるだけ持って行った方が良い。美術品の類は…残念だが諦めておくれ」
「はあ…」
「どうしてそんな事しなきゃいけないんです?」
未だ要領を得ないセイルとヤスミーン。
アルトリアは言った。
「…古今東西、政変の起こった都市では一時的に治安が極度に悪化する物と相場が決まっています。特に今回の場合は治安維持に当たるはずの衛士府が機能停止していますからね…無法地帯と化した街では何が起こるか解りませんよ。常日頃、貴族や士族に圧迫されている平民達が屋敷を襲って金品を略奪したり、家人に乱暴したり…ああ、もちろん“乱暴”って殴る蹴るの乱暴じゃありませんよ?」
「「……」」
セイルとヤスミーンは真っ青になってカタカタと小刻みに震え始めた。
ここは貴族の邸宅も多く建ち並ぶ高級住宅街…略奪目的の暴徒には恰好の獲物だ。
「か…母様!!すぐ逃げる準備に取り掛かりましょう!!」
「え…ええ、すぐにみんなを集めて!!」
「は…はい!!」
急にあたふたと動き始めた二人を見ながらアルトリアはウマルに言う。
「少々脅しすぎましたかね?」
「いやいや、アルトリアさん。これぐらいで充分じゃよ。というか今の王都は冗談抜きでそれぐらい危ない」
「でしょうね。私も陥落した都市は幾つか見て来ましたが、理性を失い感情的になった大衆ほど残虐な物はありませんから」
「ほほう…」
ウマルは興味ありげにアルトリアを見て微笑んだ。
だが残念ながら今はゆっくり話している隙は無さそうだ。

家で荷造りが行われている間、セイルとアルトリアは馬車を借りるために王都内を奔走し、結果、四台の馬車を都合して来た。
これに載せられるだけの家財を満載し、一家は逃げるように王都を後にしたのであった。

同じ事を考えたのはクルアーン家だけではなかった。
特に金をしこたま持った貴族や豪商達は風をくらって王都を脱出し、一時的に近隣の村や街に身を寄せたのであった。

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