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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 101

ジャミーラは弁明した。
「それは誤解です!私は兄上(ヤヴズ・ワム)を助けようとしました!陛下にも何度も何度も助命を嘆願しました!でも陛下は聞き入れてくださらなかった…それほどまでに陛下がアブシル・イムラーンを失った悲しみは深かったのですよ…本当に陛下の一番近くにいたのは、私ではなく彼だったのですから…」
それにヤヴズ・セムの事も嫌いだったから、その息子であるワムへの怒りも倍増した…という点は伏せておいたジャミーラであった。
「フンッ…口では何とでも言えるんだな。まぁ、あんたには利用価値があるから生かしといてやるんだな。そして傀儡として僕らのために働いてもらうんだな」
「ほら!解ったらとっとと道を開けるんだな!」
「痛っ!?」
バムはジャミーラを乱暴に突き倒して部屋へと入っていった。
「待って!行かないでぇ!!」
ジャミーラは諦めない。
なおもブムの足にすがりついて引き留めようとする。
「…この女ぁ!それ以上邪魔すると言うのなら…」
ブムは腰の帯に差していた短銃を抜いてジャミーラに銃口を向けた。
その時、部屋の中から声がした。
「やめよ!!」
バムとブムはビクッと一瞬身を強ばらせる。
続いて声は優しげな口調となった。
「ジャミーラ、済まなかったな。もう良い。もう良いのだ…」
「陛下…」
それを聞いたジャミーラは力無く床に崩れ落ちる。
「「……」」
双子は顔を見合わせて部屋の中へと足を踏み入れた。

部屋には長椅子が置かれており、そこに一人の男が半ば身を横たえるように悠々と座って居た。
バムは尋ねる。
「王様かな?」
「うむ、余は当代イルシャ国王アフメト4世である」
王は答えた。
ブムは言う。
「僕らはあんたを殺しに来たんだな」
「そのようだな」
「な…なんか随分余裕あるみたいなんだな」
「僕らに捕まるまでは必死に逃げ隠れしてたクセに、もう命乞いとかしないのかな?」
「そりゃあもちろん余だって死にたくはないが、今さらジタバタしても仕方ないしね…。世間じゃあ暗愚とか両刀使いの色狂いとか色々と言われとるらしいが、余だって一応は一国の君主だからね。最期の最期で見苦しい振る舞いはしたくない…」
そこまで喋って国王は、ふと何か思い出して付け加えた。
「…あ、そうそう。君らに会ったら是非言いたかった事があったんだ。ヤヴズ・ワム前宰相の処刑…あれはやはり早まったよ。ワム前宰相を陥れるための陰謀という可能性を考慮すべきだった。あの時は余も頭に血が上っていて判断を誤った。許して欲しい…」
そして国王は双子に軽く頭を下げた。
二人は号泣して天に向かって叫んだ。
「おぉ!!天国の父上よ!今の王の言葉をお聞きになったかな!?王が罪を認めたんだな!」
「王様!あんた思ったよりイイヤツかも知れないんだな!でも許す気は無いんだな!その首を取って父上の墓前にお供えしてやるんだな!」
「良いよ。早いとこ済ませておくれ」
そう言うと国王は両目を閉じた。
「それじゃあ僕がやらせていただくんだな…」
バムが短銃を王に向けた。
「フヒィ〜!涙で前が見えねえんだなぁ〜!」
その時だった。
「お願い!!やめてえぇぇーっ!!!!」
すっかり存在を忘れられていたジャミーラが背後から忍び寄り、いきなりバムにすがりついたのである。
「うわっ!!何すんだお前!?離せ…」
一瞬、二人は揉み合いとなった。

 パアァーンッ!!!!

「ぐ…っ!!?」
次の瞬間、銃弾が王の胸板を貫いた。
だが手元が狂って即死には至らなかった。
「陛下あぁぁ!!!!」
ジャミーラは床に倒れ伏した国王にすがりついて泣き叫んだ。
「この女ぁ!!よくも邪魔してくれたんだな!?どけい!!王にトドメを刺してやるんだな!!」
バムは剣を抜いた。
ジャミーラはその前に必死に立ちはだかる。
「ま…待って!!もう陛下は長くはないわ!トドメだけは許して…!」
「しかし首を取って父上のお墓にご報告を…!」
「まあ待つんだな、バムよ…」
バムを止めたのはブムだった。
「ブム!?何故かな!?」
「王も最後は自分の罪を認めていた…もう良いんだな。それより僕らにはこれからまだやる事があるんだな」
「…それもそうなんだな」
双子はジャミーラの泣き声を背に部屋を出た。

「ぶひひひ、ブムやっと僕らの時代が来たって感じがするんだな〜」
「本当なんだな〜バム!」
謁見の間に戻ったバム、ブム兄弟は我が世の春を謳歌して勝ち誇っている頃。

セイルはアルトリア、母ヤスミーン、ナシートと共に馬車に乗り、祖父ウマルと侍女ミレルの案内で彼等が住んでいる村へと向かっていた。

揺れる馬車の中でアリーの身を案じながら、親友の苦境を全く理解できず今回のクーデターを防げなかった自分の不甲斐無さと愚かさに後悔して近くの馬車の壁をセイルはぶん殴った。
「ハァ〜………(僕がもっと早くアリーの苦境知ってたら、今回の事件は防げたのに何で、僕は何時も鈍感なんだ!)」
バーーーーーーーーーン!!!!!!!

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