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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 98

衛士府が制圧され、王宮の近衛隊も壊滅の可能性大という現実に絶望するセイルは戦う気力を失ってしまった。
そんなへたれなセイルにアルトリアは大声で叱り付ける。
「諦めてどうするのですか!絶望は愚か者のする選択ですよ」
「だって、衛士府も制圧され近衛隊も駄目なのに、どうやってあの銃を持った連中と戦えばいいんだよ!」
アルトリアの厳しい叱責に半分涙目のセイルはどうやって、連中と戦えば良いのかアルトリアに問う。
セイルの問いにアルトリアはきっぱりと策を述べようとするが、
「良いですか、まず…」
衛士府から出てきた数名の黒覆面の男に気づかれる。
黒覆面の男たちは射撃の準備に入りセイルたちを撃ち殺そうとする。
「おい!ここに衛士隊の生き残りがいるぞ!」
しかし、黒覆面の男達が発砲する前にアルトリアセイルを強引にお姫様抱っこするアルトリアは瞬間移動魔法を唱えて上手く脱出した。
ただ、女性にお姫様抱っこされたセイルは恥ずかしくてしょうがなかった。
「撃って!!!」
「クッセイル様、ひとまず逃げますよ。ハッ!!!」
「アルトリア、まってよ!」

ークルアーン邸前ー

敵の銃撃からアルトリアの瞬間移動魔法で、何とか逃れたセイルの自宅へ逃れたアルトリアとセイルであった。
アルトリアは瞬間魔法の欠点にボヤキながら、セイルが不機嫌なのに気づく。
「ふう〜瞬間移動魔法は魔力の消費が激しいからうかつに使えないな。セイル様、もう大丈夫ですよ・・・怖い顔をしてどうしたのですか?」
「ア…アルトリア!僕だって一応は男なんだよ?」
「はあ…知っていますが、それが何か?」
「……いや、いい…」

屋敷に入ると意外な人物が出迎えてくれた。
「坊ちゃま!ご無事でしたか!」
「ミレル!?ミレルじゃないか!どうして王都に?」
「はい、実は…」
ミレルは訳を話そうとしたが…
「セイルちゃあぁぁ〜〜〜んっ!!!!」
奥からヤスミーンが飛び出して来て、セイルに抱き付いて激しく泣きじゃくり始めた。
「ぐすん…セイルちゃんが警備に駆り出された披露宴の会場が襲撃されたって聞いて…えぐ…一体どうなったかと…うぅ…本当に良く無事で…」
一方、セイルはそんな母の姿に胸が締め付けられるような思いだった。
母に心配をかけたという事もあるが、あの場で命を失った何十という衛士の仲間達…彼らにも無事を信じて待つ母が、妻が、子供達がいたはずだ。
自分はあの地獄から逃げて来た。
一人だけ逃げて、今こうして家族と再会している。
それが許されなかった人間達も大勢いるというのに…。
いや、今だってあの場に残って戦っている人間達だっているかも知れない。
彼らに顔向けが出来ない。
セイルは罪悪感に押し潰されそうになりながらも、必死に笑顔を作って母に言った。
「…母様、ご心配おかけしました。僕は、この通り…無事ですから…」
「セイルちゃん…」

そこへ、もう一人の人物が姿を現す。
「セイル!」
祖父ウマルである。
「お祖父様…!」
「いや、無事で良かった。しかしお前、どうしてここに…?」
「そ…それは…………申し訳ありません!!!」
ついに耐えきれなくなったセイルは、両手を床に着き、涙を流しながら半ば叫ぶように詫びた。
「僕は…任務を放棄して逃げて来ました!!衛士として守るべき人々も…仲間も見捨てて…一人だけおめおめと逃げ延びて来ました!!僕は、衛士として…いや、騎士としてあってはならない振る舞いをしました!!僕は…僕は…うわああぁぁぁぁっ!!!!」
「……」
床に突っ伏して泣き叫ぶセイルにウマルは黙って歩み寄った。
そしてセイルの肩に手を置いて、落ち着いた口調でゆっくりと言った。
「セイル、騎士として言わせてもらうぞ…………この卑怯者めがあぁぁ!!!!」
次の瞬間、ウマルはセイルをあらん限りの力でブン殴った!
「グハァ…ッ!!!?」
老いたとはいえ、かつてはイルシャ王国一の剣士と言われた男…その凄まじい腕力と勢いによって、セイルは玄関から外までぶっ飛ばされてしまった。
ヤスミーンとアルトリアは驚いてウマルに言う。
「お…お義父様!!?な…なんて事するんですかぁ!!?」
「ウマル殿!!セイル様にあの場から逃げるよう言ったのは私です!敵は未知の新兵器で武装した集団であった上に、言いたくはありませんが、他の衛士の方々も理性を失い完全な錯乱状態で、あの場に残る事は殺される順番を待つような物でした!それに私達はただ逃げた訳ではない!衛士府へ行って応援を呼ぼうとしていたのです!」
「そんな言い訳など聞きたくない!ワシは騎士として孫がこんな卑怯な振る舞いをして恥ずかしい…」
…と、ウマルはそこで言葉を切ってセイルに歩み寄り、その両肩に手を置いて涙を流しながら言った。

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