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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 97

「アルトリア!!!居るんだろ!!?出て来てくれ!!!アルトリア!!!アルトリアあぁ!!!!」
もし、その姿を冷静に観察する者があったとすれば、彼もまたこの場の多くの発狂者の一人であったろう。

ふと、セイルは背後から近付いて来る気配を感じた。
「ア…アルトリアぁ…!!!」
彼は正に地獄の直中で救いの神に出逢った境地で振り向いたのだった。
だが、次の瞬間その期待は裏切られた。
「へへへ…な〜にが“アルトリア”だい、お役人様よぉ…」
「あぁ…っ!!!?」
銃を持った黒覆面の一人が立っていた。
顔に巻いた黒い布から唯一見える目が楽しそうに笑っている。
「死ね…」
男は銃を構えた。
(もうお終いだぁ!!…てゆーか何でアルトリアは応えてくれないんだよぉ!?)
セイルは死を覚悟してギュッと目をつぶった……その時だった!
「まったく騒がしいですねぇ。ゆっくりつまみ食いをする暇もありませんよ…」
「「…!!」」
背後からの声にセイルと男は同時に振り向く。
そこにあったのは串刺しの肉を悠々と頬張る、彼の頼りになる“剣”である少女の姿だった。
「あ…アルトリアあぁ〜!!!」
「チッ…まずは貴様から殺ってやる!」
男がアルトリアに銃を構え直そうとした瞬間、アルトリアは最後の肉片を串から喰い千切ると、その鉄串を男の眉間に突き立てた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!?」
男は両目、鼻、口から大量の血を噴き出しながら絶叫して地面をのた打ち回った。
「さ、行きましょうか。セイル様」
アルトリアは平然とセイルに片手を差し出す。
「い…いい…行くって…一体どこへ…!?」
「こんな所でへたり込んでいたら、いずれ殺されてしまいますよ。神殿の裏門から逃げましょう」
「で…でも!僕は衛士として人々を見捨てて自分だけ逃げるなんて事は…!」
「腰抜かして立てもしないクセに何言ってるんですか。それともここで人々が虐殺されていく様を指をくわえて見ていながら自分の順番を待ちますか?」
「……」
騎士として自分の任務を遂行したかったセイルであったが、
何時に無く厳しい表情をするアルトリアに何も出来ず殺される厳しい現実を突きつけられ首を縦に振るしかなかった。
素直に従うセイルにアルトリアは満足すると彼を連れて神殿の裏門へ逃走した。
「宜しい!では、ついて来て下さい!」
「うっうん・・・(結局、僕ってアルトリアがいなければ何もできないんだな)」
自分の非力さをセイルは呪うしかなかった。

一方、セイルたちが神殿を何とか脱出してた頃。

セイルの祖父ウマルと彼に仕える侍女のミレルが王都に到着していた。
しかし、門の中に入るなり王宮と衛士府の方角から火の手上がる光景に二人は驚いてしまう。
特に侍女のミレルはパニクってしまいウマルは落ち着けと窘められる。
「おっ大旦那様、王宮と衛士府の方角に煙が上がってます!!!」
「落ち着きなさい!ミレル!」
「すっすいません!」
ウマルの叱咤のおかげでミレルは落ち着きを取り戻した。
ウマルは王都がこうなった原因を孫セイルに聞くため彼を探す事を決めた。
「王都が、こんな状況では慌てるのも無理ないな。まずはオルハンの自宅に行き事情を聞くぞ」
「大旦那様、お供します」
早速、ウマルはミレルを共にクルアーン邸へ向かった。
なぜこの二人が王都に来たのか…その理由はおいおい語るとして、再び視点をセイルとアルトリアへ戻そう。

二人は修羅場と化した神殿を脱出し、衛士府へと向かっていた。
この惨状を報告し応援を頼もうと思ったのだが、いざ行ってみると衛士府は既に黒覆面の仲間達によって制圧されていた。
もう近付く事すら出来ず、中の衛士達がどうなったのかさえ判らない。
「嘘だろう…!?ここまで…!?」
物陰からその様子を見たセイルは愕然とした。
アルトリアは言う。
「衛士隊が完全に機能しないとなると、あと期待出来る兵力といったら王宮の近衛隊ぐらいでしょうが…」
そして彼女は王宮の方に目をやる。
煙が上がっていた。
「…あの様子では王宮の方も同じ有り様でしょうね…つまり今や王都は完全にあの黒覆面集団によって制圧されたと考えるのが妥当でしょう」
「そ…そんな…」
セイルはガックリと地面に両膝を付いた。

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