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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 96


集団の行く手を数名の衛士達が遮った。
「こらこら!何なんだ君達は?」
「困るよ〜予定に無い事されちゃあ…ほら、散った散った!」
黒覆面の一人が黙ったまま手に持っていた長い棒のような物を衛士の一人に向けた。

 パアァーンッ

乾いた破裂音が辺りに鳴り響き、その衛士はバッタリと倒れた。
「「「……?」」」
その場に居合わせた誰も皆、何が起きたのか理解出来ずポカーンとしている。
たった一人だけ、以前にもそれと同じ光景を見た…というか体験したザダームが叫んだ。
「ザッバーフだ!!!ザッバーフ・アリーだ!!!」
それを聞いたセイルはハッと気付いた。
以前たまたま街でアリーに会った時に見せて貰った西大陸の新兵器ではないか。
少し形状が違うが間違い無い。
アリーの言葉が次々と脳裏に蘇る…。

『その破壊力は凄まじく、鉄の鎧兜も容易く打ち砕く…』

『同じ飛び道具でも弓矢の比じゃない。射程距離もね…』

『極端な話をすると、この銃を使えば、初めて持った農民でも熟練の騎士や魔術師を一瞬で殺せる…という事です。もしこれが何十、何百と揃ったら…?』

『なぜだ!?なぜ誤った既存の概念に固執して進歩の可能性の芽を摘み取ってしまうんだ!?』

『近い内に全て解るよ…』

「アリー!!!あれはこういう事だったのか!!!」
セイルは叫んだ。
「ど…どうした!?クルアーン君!」
いや、だが待て…とセイルは思う。
まだあの覆面集団とアリーが関わりあると決まった訳ではない。
だが彼らが持っている棒状のアレが実はとんでもなくヤバい物である事だけは確かだ。
セイルは居合わせた皆に向かって言った。
「皆さん!!!危険です!!今すぐ逃げてください!!!」

「いひいぃ〜〜っ!!!?」
ザダームは一人、奇声を発しながら神殿の奥へと逃げ込んだ。
「む…息子よ!どこへ行く!?」

だが事情を知らない招待客の貴族達はセイルの言う事になど耳を貸さない。
「な〜にが“今すぐ逃げてください”だ。怪しい者を取り締まるのが君たち衛士の仕事ではないのかね?」
「その通り!早くあの不気味な輩共を排除したまえ」
「そんな事言ってる場合じゃないんだ!!!!」
「ムッ!たかだか一衛士の分際で貴族に向かってその口のきき方は何だ!?」
「まったく!近頃の衛士は教育がなっとらん!貴様の所属部隊と官姓名を名乗れ!」

そんなくだらない掛け合いをしている間に黒覆面の男達(おおよそ20〜30人程度)を衛士達の一隊(約100名)が取り囲んだ。
ちなみにセイルの中隊とは違う部隊だ。
先ほど倒れた衛士を起こそうとした衛士は悲鳴を上げた。
「ひぃ!!?し…死んでる!!」
隊長は男達に向かって怒鳴った。
「き…貴様らぁ!!!今すぐその槍のような物を地面に置いて両手を上げろおぉ!!!」
だが男達は従わず、その棒のような物を衛士達に向けて構えた。
「まずい!!避けろおぉーっ!!!!」
セイルは叫んだ。
次の瞬間…

 ババババババアァー―――ンッ!!!!

轟音が鳴り響き、辺り一面は煙に包まれて何も見えなくなった。
「ぎゃあぁ!!?」
「ぐあぁー!!」
ただ、あちこちから悲鳴だけが聞こえる。
やがて煙が晴れてくると、惨状が露わとなって来た。
衛士達は体中から血を流して無残に転がっていた。
中にはまだ息があり苦しみのた打ち回っている者もいる。
「う…うわあぁぁ〜〜!!!?」
「ぎゃあぁぁ〜〜!!!?」
「助けてくれえぇ!!!!」
それを目の当たりにした招待客達はたちまちパニック状態に陥った。
本来ならパニックを鎮める立場の衛士達ですら仲間達の無残な死に様に職務を放棄して客に混じって逃げようとしている。
全員が入り口に殺到し揉み合いとなる。
その人だかりへ向かって、悠々と次弾の装填を終えた黒覆面達が次々と弾を打ち込んでいく。
もちろん老若男女を問わず無差別にである。
人々はバタバタと倒れていく。
それは更なるパニックを巻き起こした。
「いぎいいぃぃぃぃぃっ!!!!?」
「ぐぎゃああぁぁぁぁぁっ!!!?」
半狂乱となった本能むき出しの人間達の悲鳴と怒号が辺りに響き渡る。
ある婦人は血を流して動かなくなった我が子を抱きかかえてゲラゲラと壊れたように笑っている。
ある衛士は小便を垂れ流しながら何故か神殿の柱をよじ登り始める。
ある若い娘は衣服を脱ぎ捨てて人目もはばからず自慰行為を始める。
完全に恐怖と狂気がこの場を支配していた。
それは正に阿鼻叫喚の地獄絵図そのものであった…。

「あ…ああ…あ…」
セイルは腰を抜かし、その場にへたり込んでいた。
さっきまで一緒に居たはずのアブ・シルとアブラハムは、もうどこへ行ってしまったのかも分からない。
周囲には誰の物とも判らない死体がゴロゴロと転がっているが、もしかしたらあの中に居るかも知れない。
その時、彼はハッと気付いて叫んだ。
「そうだ…アルトリアだ!!!」
彼は自らの腰に下げた聖剣に向かって叫んだ。

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