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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 95

「ついに…ついにこの日が来た…」
ヤヴズ兄弟の屋敷…その数ある客間の内の一つで椅子に座ったアリーが一人つぶやいていた。
彼の手にはザダームを撃った時の、あの銃が握られていた。
「国に巣くう癌共め…お前達が今日まで平然と踏みにじって来た人間達の真の力を思い知らせてやる…!!」
そこへノックの音がして、男が入って来た。
「アリーさん、みんな準備出来ました。バム様とブム様も中庭でお待ちです」
「ああ、済まない。今行くよ…」

中庭には異様な姿の男達が集まっていた。
100人以上は居るだろうか…誰もが黒い布で顔を覆っており目しか見えない。
男達は手に手にアリーの物と同じ武器…銃を持っていた。
ただし、アリーの持っている物が銃身が短く携帯性に優れた“短銃”であるのに対し、男達のそれは銃身が長いタイプだ。
こちらは携帯性、隠匿性に劣る代わりに命中率がやや高くなる。

「ようやく来たんだな」
「覚悟は出来ているかな?」
この二人だけは顔を隠していても誰だか判る。丸々と太った双子…バムとブムがアリーに歩み寄って来て言った。
アリーは答える。
「ええ、出来ていますとも。今さら後には退けない身でしょう。僕も、あなた方も…」
「フヒヒヒヒヒ!その通りなんだな」
双子は男達の方へ向き直って大声で叫んだ。
「それでは皆の者!」
「各自、目的地に向かって…」
「「出発するんだな!!!」」
「「「オオオォォォォォー―――っ!!!!」」」
そして、ずっと固く閉ざされたままだったヤヴズ邸の門扉がギギギ…と音を立てて開け放たれた。
そこからゾロゾロと出て来た黒覆面の集団は三隊に別れ、王都各所の目的地へと向かって行ったのである。
バム率いる第一隊は王宮へ…。
ブム率いる第二隊は王都内の治安維持を一手に担う役所、衛士府へ…。
そしてアリー率いる第三隊は…。





再び結婚式場の神殿…
「いやぁ〜、それにしても凄い数の人だねぇ…国中の貴族の半分は今ここに集まって来てるんじゃないかなぁ…」
「さっすが大臣家の婚礼ともなると壮大な物ですね。料理もさぞかし豪華な物が…」
「しつこいねぇ、君も…」
着飾った貴族の招待客達を眺めながら話し合うアブ・シルとアブラハム。
この会場に集まった貴族の老若男女は総勢500名にはなろう…アブ・シルは国中の貴族の半分と言ったが、これでも一割にも満たないだろう。
さらに会場の運営係や各所に配置された衛士も含めると、もう物凄い数の人がごった返している事になる。

セイル、アブ・シル、アブラハムの三名は神殿正面の警備に当たっていた。
ぼんやりとアリーの事を考えていたセイルは、ふと神殿前の大通りの向こうから近付いて来る一団に気付いた。
「あれは何だろう…?」
「ああ、花嫁を乗せた輿の行列だよ」
隣のアブ・シルが言う。
招待客達からワァーッと歓声が上がった。

それは確かに花嫁の行列だった。
行列は神殿の長い正面階段の前で止まり、屋根付きの輿から純白の婚礼衣装に身を包んだ花嫁が降りて来た。
「おぉ!美人だぁ…いやぁ〜、あんな貴族の令嬢、一生に一度で良いから抱いてみたいもんだねぇ〜」
「先輩、その発言こそ人に聞かれたらヤバいっすよ。なぁ、セイル……セイル?」
美しい花嫁を見て鼻の下を伸ばすアブ・シルに、それをたしなめるアブラハム。
セイルも花嫁をジッと見つめていた。
(あの人がアイーシャさん…アリーの…)
「おーい!セイル!なに見とれてんだよ〜」
「へ?…あ、ごめんごめん…ついボーっとしてて…」
アブラハムに呼ばれて我に返るセイル。
それを見ていたアブ・シルは笑って言った。
「ハハハ…セイル君も料理より女の子だよねぇ〜」
「い…いや、そういう訳では…」

その時、長い階段の上…神殿の入り口に花婿であるムスタファ・ザダームが姿を現した。
彼はまるでこの世の全てを我が手中に収めたかのような勝ち誇った顔をしていた。
いわゆる、ドヤ顔。

セイルは花嫁と花婿を複雑な気持ちで眺めていた。
「見ろよ、あの花嫁さん感極まって泣いてるよ」
「いや〜、人生最大の晴れ舞台ですもん」
呑気に話し合うアブ・シルとアブラハムにセイルは半ば独り言のように呟く。
「…いや、あれは感動の涙なんかじゃない…悲しみの涙だよ…」
「はあ?」
「なに言ってんだセイル?」
事情を知らない二人は首を傾げた……その時である!

突如として脇道から黒い覆面で顔を覆った謎の集団がワラワラと現れたかと思うと、神殿の方へ向かって来た。
「何だ?あいつら…」
「予定には無いですね。サプライズ企画か何かでしょうか?」

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