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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 93





それから数日は何事も無く過ぎた。
衛士府は連日アリーの捜索を続けたが発見には至らず、その結果アリーは王都外へ逃亡した可能性が高いと結論付けた。
これに怒ったのが内務大臣のムスタファ・ハシーム…アリーに撃たれたムスタファ・ザダームの父親である。
「えぇい!まったく衛士府の役立たず共め!逃亡犯一匹捕まえられんのか!あの無能揃いのタダ飯喰らい共!」
その日の晩もハシームは自宅で酒を飲みながら衛士府に悪態をついていた。
そこへ息子ザダームが姿を現す。
「まあまあオヤジ、そう熱くなんなよ」
「おぉ!ザダームよ!もう傷は良いのか?」
「ああ、幸い急所は外れていたからな。来月の婚礼は予定通り執り行えそうだ」
「お前の結婚祝いにザッバーフ・アリーの首を挙げてやろうと思っていたが、どうやら無理そうだよ。衛士府のロクデナシ共のせいでな」
「まぁ、俺は端っから衛士府なんぞには期待しちゃあいなかったがね…。まぁ、披露宴会場の護衛ぐらいには役立つだろうよ」
貴族の婚儀の護衛…これは本来は衛士府の職務ではないのだが、有力貴族の婚礼ともなれば何が起きるか判らないという事で、不測の事態に備えて衛士隊を警備に当たらせる…という建て前だが、つまる所は衛士隊の私用である。
もちろん事前にムスタファ家から衛士府の総監へ“付け届け(ワイロ)”が為されている事は言うまでもない。
ザダームはイヤらしい笑みを浮かべながら思う。
(ククク…ザッバーフ!どこか遠い地で指をくわえて見ているが良い!惚れた女が他人の嫁になる所をなぁ…!)




さて同じ夜、王宮の一室では一組の男女が不義の愛に燃えていた。
「はぁ…はぁ…おぉ〜!ジェム〜!もっと…もっと激しく私を貫きなさぁい!」
「こうですか?王妃殿下」
「おぉ〜!!いい!いく!いくぅ〜!」
寝台の上ではヤヴズ・ジェムとトド…もとい豊満な…というか肥満した中年女が激しく睦み合っている。
その女とは…なんとイルシャ王国第一王妃シェヘラザードであった。
だが夢中で快感に喘ぐシェヘラザードに対し、ジェムはどことなく冷めている。
一応勃ってはいるようだが…。

国民からは(表向き)国母と崇められている第一王妃シェヘラザードであったが、実は彼女には悪い噂があり、気に入った近臣や小姓を片っ端から寝所に引き込み、これまで関係した男は両手の指でも足りない数らしい。
そしてどうやらその噂は偽りではなかったという事を今ジェムは身を以て実感させられていた。
もっとも(国政に携わる重圧ゆえだろうか)性の乱れは王族および貴族全体に対して言える事であり、第21王女のサーラ姫が騎士学校の同級生である士族の少年相手に処女を散らしてしまった件が特に珍しい事でもないくらいだ。
要は公(おおやけ)になりさえしなければ良いのである。



…営みを終えたジェムは、未だウットリとした表情を浮かべながらその巨体を横たえている王妃に口付けして告げた。
「…では王妃殿下、私はこれで…」
「あぁ…もう行ってしまうの?私の可愛い子犬ちゃん…」
「お許しくださいませ。万が一にも私達に悪意を持つ者の目にとまり、国王陛下に告げ口でもされれば、私の首が飛んでしまいますから…」
笑顔なのだが冗談とも本気ともつかない口調で言うジェム。
「あら、陛下なら大丈夫よ。今夜もあなたの叔母上…第13王妃ジャミーラと枕を共にしておいでだもの。もっとも少し前までは“あなたが殺した”アブシル・イムラーンと…あら、少し喋りすぎたかしらね」
「いえ、そういう話は風の噂に聞いておりますので…」
王妃は少し下品な笑みを浮かべつつジェムに尋ねた。
「ねえジェム、あなたも男性同士での楽しみ方なんて知っているの?あなた顔立ちが女性のように優しいからきっとモテるわよぉ〜」
話題もさることながら、いかにも下世話な話し方にジェムは王妃が気付かない程度に僅かに眉をしかめつつ答えた。
「…いえ、残念ながら私はそちらの方面には興味がありませんもので…」
「ふ〜ん…あっそ…」
やや気分を害した王妃にジェムは新たな話題を振ってやった。
「…そうそう、私の騎士学校の同期に一人、いかにも女顔で線の細い感じの美少年といったやつが一人いましたよ。本人は自覚していなかったようですがね…」
「あらそれ本当!?その子、王都にいるのかしら?」
「はい、王妃殿下。名をクルアーン・セイルと申しまして、宮仕えしております上級士族クルアーン・オルハンの息子でございます。今は衛士府に勤めているようです」
「クルアーン・オルハン?それは知らないわ。でもクルアーン・セイルね…なるほど、その名前、覚えておきましょう…ジュルリ」
王妃はニヤリと笑って溢れる生唾をすすった…。


「…っ!?」
その瞬間、自宅で寝ていたセイルは原因不明の寒気を感じてゾクッとした。


…身なりを調え、王妃の寝室を抜け出したジェムは王宮内の一角に与えられた自室へと引き返した。
「お疲れ様でした。ジェム様」
シャリーヤが出迎える。
「風呂に入りたい…」
「すぐに当直の女官達に命じて用意させます。それと、一つ気になる事が…」
「何だ?」
「はい、ジェム様の従兄弟、バム殿とブム殿が何やら水面下で不穏な動きをしている模様です」
「ほう…あの馬鹿共、せっかく命だけは助けてやったというのに…また一体何を企んでいるのかな」
「それが、密かに人手と武器を集めているのです。特に西大陸の新兵器“銃”を大量に…」

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