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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 92

その時、窓の外の上空から少女の声がした。
「ねぇ、あなたがアリーさん?」
「え…?」
声の方を見ると一匹の妖精が飛んでいた。
「これは珍しい!フェアリーとは……確かに僕はアリーだけど、君は…?」
「私はナシート、セイルに頼まれてあなたの様子を見に来たの」
「セイルに…!?」
「そうよ。セイルはあなたの事すっごく心配してるわ。事情が全く見えないって…」
「そうか…。しかしまさかフェアリーを様子見に寄越すとは…アルトリアさんの時といい、全く驚かせてくれるよ…」
アリーは少し笑って言った。
「セイルに伝えてくれ…心配かけて悪かった。今はちょっと訳あって詳しい事は話せないけど、僕は大丈夫だから安心してくれってね…」
「セイルにも事情は話せないの?」
「…済まない。でも近い内に全て解るよ」
「解った。確かにセイルに伝えるわね!」
「ああ、頼んだよ」
笑顔で応えるアリーにナシートは安堵すると愛しいセイルに伝える為に静かに外へ飛び去った。
アリーが無事だと知ったらセイルがホッとする顔を目に浮かぶナシートであった。
「アリーって人が無事で良かったわ〜セイルが喜ぶわ〜(でも、まさかあの屋敷で私を買おうとした変態二人組みの臭いがしたわ…これもセイルとアルトリアに言った方が良いわね)」
ただ、アリーのいた屋敷から微かに発した臭いから自分を買おうとしたフードを被った変態二人組みと同じ臭いがしたのに気付きセイルとアルトリアに相談する事を決めた。

「ありがとうナシート。君のお陰でアリーが取り合えず無事なのが解って良かったよ」
その後、クルアーン家に戻ったナシートはアリーの伝言を一部始終伝えた。
親友アリーがとりあえず無事なのが解って、安堵したセイルはナシートの頭を指先で軽くなでる。
頭を撫でられ嬉しさの余りにナシートは舞い上がりセイルの周りをくるくる飛び回る。
「セイルの役に立てて、わたし凄く嬉しい〜」
喜ぶナシートにアルトリアは不愉快であったが、あえて我慢して様子をみるのをセイルに進言する。
「………セイル様、アリー殿はしばらく様子をみるのが妥当ですかね」
「そうだね。相手は蟄居してるとはいえヤヴズ家の人間だからね」
アルトリアの進言にセイルもしばらく様子を見る事を決める。
すると、思い出したように我に返ったナシートはセイルにアリーを匿っているヤヴズ邸で自分を最初に買おうとした二人組の臭いがした事を話す。
「アリーって人を匿ってるヤヴズ家の屋敷で、私を最初に買おうとしたキモい太った二人組の臭いがしたのよ」
「本当かいナシート。でも、何でそんなことが解るの?」
ナシートの意外な能力に驚くセイルにナシートは自分たちフェアリーの特性を話す。
「ええ、間違いないわ。私たちフェアリーは人間よりも聴覚や嗅覚が発達してるから解っちゃうのよ」
「こいつ等、フェアリーは五感が発達してますからね。そうなると、ナシートを買おうとしたあの二人組は処刑されたワム前宰相の息子になりますね。しかし、ジェムと言いヤヴズ家はろくでなしばかりですね」
セイルは苦笑いしながら言った。
「まあ一応ヤヴズ家はこの国で五指に入る名家なんだけどね…。それにしても何故ヤヴズ家がアリーを匿ってくれているのか…それにアリーが大臣の息子を殺そうとした事件の真相…その辺の理由は結局は解らず仕舞いか…」
「でもあのアリーって人は“近い内に全て解る”って言ってたわ」
「何だろう?気になるなぁ…」
首を傾げるセイルにアルトリアは言う。
「アリー殿が話したくないというのなら仕方ありません。日を置いてもう一度ナシートを偵察にやり、屋敷の中で何をしているのかを探らせましょうか?」
「…いや、アリー自身が“大丈夫だ”と言ってるんだ。僕はその言葉を信じて待つ事にするよ」
「そうですか。セイル様がそれで良いなら…」
友を信じる…そう決めたセイルにアルトリアも異論は無かった。

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