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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 91

今すぐにでもセイルは屋敷に侵入してアリーを連れ戻したかったが、衛士に過ぎない自分がそんな事をしたら、自分だけでなく家族も罪に問われるのでセイルは黙って硬く閉まった門扉を観るだけしか出来なかった。
アルトリアはセイルを気遣いながら、自宅に戻れと忠告する。
「セイル様、これ以上は屋敷の者たちが不信がりますから帰りますよ」
一介の衛士が貴族の屋敷を観てたら怪しまれると不味いのでセイルは仕方なくアルトリアと共に自宅へ戻った。
「そうだね…今は帰るしかないね」
「はい、お供します」
家へ帰るセイルであったが、それでも諦め切れないのかアリーのいるヤヴズ家の方角を何度も振り向いた。

諦め切れないセイルの態度をアルトリアは注意する。
「セイル様、振り向いてもアリー殿は戻ってきませんよ。今はアリー殿の無事を信じるしかありません」
親友のアリーが困っていた時、セイルは何も出来なかったことを悔やむ。
しかし、アルトリアは今は待とうと少し厳しい口調でたしなめる。
「わ…わかってるよ。でもでも、アリーが困ってた時に何も出来ない自分が悔しいんだ」
「気持ちは分りますが、焦っても失敗するだけです、今は待ちましょう」
何所までも冷静なアルトリアの態度に自分の未熟さに気づかされるセイルは何も言えなかった。
「・・・・・・・・・・・」
「セイル様、お家に帰る前に軽く何か食べに行きましょう。こういう時は食べるに限ります。金ならば、あのゴロツキから奪ったのがありますよ!」

その後、二人は適当な食堂で軽い食事を済ませ、ついでに退勤時刻までの時間を潰して帰宅した。

「セイル〜!!見て見てぇ〜♪」
家に帰るとナシートが嬉しそうにハシャぎながら飛んできた。
見ると服を着ている。
「どうしたんだい?それ」
「セイルのお母様に作って貰ったの♪」
そう言えばそんな事を言っていたのをセイルは思い出す。
「ねえ、セイル!私かわいい?かわいい?」
「うん、可愛い」
セイルは微笑み、指先でナシートの頬を撫でてやる。
ナシートは喜んでセイルの周りをぐるぐる飛び回った。
「キャ〜!セイルに可愛いって言われちゃったぁ〜♪」
アルトリアは溜め息混じりにつぶやく。
「テンション高いなぁ、お前…」
…とセイルは突然何かを思い付いたように叫んだ。
「そうだ!!!ナシートだよ!!」
「は!?なになに!?」
続いてアルトリアも手をポンと打って言う。
「そうか!こいつは使えますね」
「だから何なのよ〜!?」



その頃、ヤヴズ邸では…
「…なるほど、あなた方の目的は解りました。…で、僕はその“計画”に協力すれば良いんですね?」
アリーはバムとブムと三人で何やら話し込んでいた。
「フヒヒ…さすが王立学士院入学時首席…理解が早くて助かるんだな」
「いえ、そうでもなければ貴族のあなた方が身分の低い士族の僕なんかを匿ってくれる理由がありませんから…」
「まあ、そう卑屈になる事はないんだな。それよりこの計画を聞いたからには嫌とは言わせないんだな。もし断れば…」
「断る?とんでもない…」
アリーは二人の顔を交互に見据えてハッキリと言い放った。
「…むしろ望む所ですよ。この国の中枢に巣くう腐敗堕落しきった害虫共に目に物を見せてやるんだ…」
そう言うアリーの瞳には地獄の色が浮かんでいた…。

「ブムよ、あの男をどう思う?」
アリーが去った後、バムとブムは二人で話し合っていた。
「バムよ、ヤツは権力を憎んでるみたいなんだな」
「学士院を追い出され、女も取られたからなぁ…」
「ま、ヤツの権力者への憎悪は僕らにとっては好都合なんだな。全く良い手駒を手に入れたんだな〜♪」
「とりあえず僕らはヤツが指示した“例の物”を集めるんだな」
「しかし“アレ”はこの東大陸ではそう簡単には手に入らない代物なんだな」
「多少は金が掛かるのも仕方ないんだな。計画完遂のためなんだな。西大陸の商人を中心に片っ端から当たってみるんだな」
「しかし決行の予定が来月初旬とはちょっと早過ぎる気がしないかな?」
「確かに…しかしあまり先送りしても仕方無いんだな。決行までの期間が長引けば長引くほど計画が外部に漏れる可能性も上がるんだな」
「ま、それもそうかな」

一方、アリーは屋敷内に与えられた一室の窓辺で佇んでいた。
王宮に近い所にあるこの屋敷からは宮殿が見える。
アリーは王城の方をキッと睨み付け、拳を握り締めて呟いた。
「もうすぐ…もうすぐだ…待っていろよ…」

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