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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 90

男…ムサルマーンは杯をくゆらせながらチラッとアルトリアを横目で見て言った。
「知りたい情報がある」
「情報ね。なら金だ。金さえ払って貰えりゃあ何だって教えてやるよ」
「知りたいのはザッバーフ・アリーという人物の居所だ。大臣の息子への殺人未遂容疑で昨日今日指名手配されたばかりの人物なのだが、分かるか?」
「なるほどねぇ…」
ムサルマーンは何かに納得したように頷く。
「…そっちの衛士さんはアンタのツレだな。こんな所まで犯人の情報を求めて来るとはご苦労な事だ」
セイルは言った。
「逮捕したいんじゃありません。彼は僕の友人なんです。何とかして彼を助けたくて情報を求めて来ました」
アルトリアは内心で溜め息を吐いた。
(セイル様…ゆきずりの情報屋なんかにいちいち事情なんて説明しなくて良いのに…足元見られますよ)
スレていないというか…世渡り慣れしていないというか…お人好しというか…まぁ、それがセイルの良い所なのだ。
「なるほど、友人をねぇ…気に入った」
だがムサルマーンの方はそんなセイルに対して好印象を持ったようだった。
幾度となく修羅場を潜り抜けて来た猛者達ばかり見て来たせいだろうか。
「お願いします!アリーが今どこに居るのか教えてもらえますか!?」
「解った、解ったから…確かにお友達を救いたいというあんたの心意気は気に入った。だが俺は情報屋だ。情報料を貰わなきゃ教えられねえ」
「お金ならあります!ね、アルトリア!」
セイルは紅潮した顔でアルトリアの方を振り返る。
「は…はあ、ここに…」
これから自分が交渉していくつもりだったのに、まさかセイルが話を進めてしまうとは…アルトリアは半ば感心、半ば呆然としながらも、さっきチンピラ共から奪った金の入った袋を差し出した。
ムサルマーンは中の金額を確かめながら呟く。
「…こんな端金(はしたがね)じゃあ大した情報は教えられねえな…」
「そ…そんな…!」
「チッ…シケたチンピラ共め」
落胆しかける二人にムサルマーンは言う。
「…と言いてえ所だが、この件に関しちゃあ俺の方でも今の時点で大した情報は持っちゃいねえんだ。良いだろう。教えてやるよ。あんたの友達の居場所…」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
礼を言うセイルに上機嫌なムサルマーン気にするなと言うと。
ムサルマーンは少し酔ってるのか、セイルに協力した理由とこの国の腐敗振りを少し語りだす
「気にするなって〜この国の腐敗振りは本当にお先真っ暗だからな。王はどうしようもない腑抜けで色狂いの暗愚、それに群がる屑な王族と貴族たちに士族は上の連中に媚びてる有様。お陰で強者が威張り弱者は泣きを見るばかりで救いようの無い地獄の国にあんたみたいな青臭い奴が眩しくてな〜手助けしたくなっただけだよ」
ムサルマーンの苛烈なイルシャ王国批判に王国と王家への忠誠心が強いセイルは『違うと』言いたかった。
しかし、ザラーム街の惨状を考えると何も言えずセイルはアリーの手がかりだけを頼んだ。
「そ…そうですか、アリーの所在お願いします」
「あいよ!所であんた達の名前聞いてなかったな。依頼人の名前が知っておかねえと情報は提供し難いんでね」
依頼を引き受けたムサルマーンは依頼人であるセイルとアルトリアの名前を訊ねる。
セイルはムサルマーンに自分の名前を素直に名乗り、アルトリアはややぶっきらぼうながらも名乗った。
「そうでしたね。セイル…クルアーン・セイルです」
「アルトリアだ!」
「クルアーン家って、上級士族だな。通りで世慣れしてねえお坊ちゃまだな思ったよ」
セイルがクルアーン家の人間と知ると、ムサルマーンはセイルが世慣れしてないのに大いに納得する。
「…それで、教えてもらえますか…?」
「…ああ、良いぜ。あんたの友達は今…」
ムサルマーンは二人に話して聞かせた。




それから数時間後…
「ここかぁ…」
日もだいぶ西へと傾いて来た時間帯。
場所はザラーム街から出て、王都内でも高位の貴族達の邸宅が建ち並ぶ高級住宅街(実はセイルの家の近所だった)。
その中でも一際立派な一件のお屋敷の門前に二人は立っていた。
塀は高く、門扉は堅く閉ざされており、中を見る事は出来ない。
そこはかつて謀反の罪で処刑された宰相ヤヴズ・ワムの邸宅であり、現在ここの主はワムの双子の息子バムとブム。
二人は罪には問われなかったが、謀反人の身内という事で今は蟄居を命じられているという。
「この屋敷の中にアリーが…?」
確かにアリーがこの屋敷の中へ入っていく所が目撃されている…とムサルマーンは言っていた。
そしてそれ以上の事は一切分からないとも…。
セイルはつぶやく。
「貴族の邸宅に入れるのは近衛隊だけ…衛士隊は無理だ。これでひとまずアリーが捕まる心配は無くなった。でも疑問だらけだ。なぜヤヴズ・ワムの息子達がアリーを庇う?アリー、君は一体この中で何をしているんだ…?」

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