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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 10

タルテバのゴマすりにドルフは鼻高々だ。
ドルフの実家であるイシュマエル家はイルシャ王国内でも屈指の名家であり、国家の要職である宰相や大将軍の地位を歴任して来た。
元は前王朝の地方官吏の家柄に過ぎなかったのだが、建国に際してイルシャ・ルーナ女王のために尽力した功績で取り立てられた…すなわち王家よりも歴史が古く、その影響力は“他に並ぶ家無し”と称される。
「とにかくこれでセイルの野郎はお終いですよ」
「ククク…馬鹿な奴だぜ。俺様に逆らわなけりゃあ、こんな事にはならなかったのによぉ…ガァーッハッハッハッハッ!!!」
「だから声デカいですって!!誰かに聞かれでもしたら…」
しかしてその時、背後の草むらが僅かにガサガサと音を立て、何者かが立ち去って行った事に二人は気付かなかった…。


一方、当のセイルは重い足取りで教室に戻って来た。
(ハァ…どうしてこんな事に…?今さら休み前の試験の結果でどうこう言って来るなんておかしいじゃないか…。それに確かに実技の成績は最悪だったかも知れないけど、その分は学科の方で頑張ったから総計では合格ラインに達してたはずなのに…)
実はセイル、騎士を目指しているクセに超が付くほどの運動オンチで剣の才能はからっきしだった。
その反面、勉強の方は常に学年トップであり、これが陰険なタルテバに(一方的に)危険視されている理由であった。

教室に入ると級友達の視線が一斉にセイルに集まる。
その中の二人がつかつかとセイルに歩み寄って来た。
「セイル!」
「お前にちょっと聞きたい事がある!」
「あぁ…パサン、アリー、何の用?僕今すっごい落ち込んでるから出来れば後にして欲しいんだけど…」
「いや、そういう訳にはいかんぞ!」
二人ともセイルの友人だが性格は真逆と言って良い。

パサンはこの学校には珍しい平民の出身だが、それを引け目にも思わず、貴族や士族の生徒に媚びる事も無い朗らかな性格で、また可愛い女の子には必ず声をかけるナンパ野郎でもある(成功率は低いが)。
彼はいわば“特待生”で、その剣技はセーラ王女やドルフにも匹敵するレベルである。
ただし学業は落第スレスレだ。

一方のアリーは級長を務めるクソ真面目な堅物で“優等生”を絵に書いたような男だ。
学業においては常にセイルに一歩及ばず、勝手に彼をライバル視している。
ただ、彼にはタルテバのような陰湿さは無い。
セイルと同じく士族の家に生まれたため半ば強制的に騎士学校に入学させられたが、夢は王立学士院に進学して学者になる事だという。
「…で、聞きたい事って…?まぁだいたい想像付くけど…」
「分かってんだろ!?お前が連れて来たあの美少女だよ!お前が…よりによって一番女に縁の無さそうなお前が休み明けに女を連れて学校に戻って来るなんて…!しかも人間の女の子の娘をだなぁ…!」
「彼女は何者なんだ!?君とは一体どういう関係になる!?何と言って騙して連れて来たんだ!?」
「お…お前ら僕を何だと思ってるんだ!?…彼女は…アルトリアは僕の実家で働いていた召し使いで、身の回りの世話をさせるために学校に連れて来たんだ。ただそれだけだよ…」
「ふ〜ん…召し使いねぇ…」
「本当にそれだけなのか…?」
(ウッ…信じてない…)
ちなみに“召し使い”と称してフィアンセやセックスフレンドを寮に住まわせる事は、有力貴族の子弟の多いこの学校では半ば“暗黙の了解”としてまかり通っている…。

しかし、それはあくまで貴族の話…。
士族の子弟に過ぎないセイルにセフレや妾になる召使なんて分不相応な物であった。

「本当だよ!!最近の都は物騒だから、お祖父様が護衛にとアルトリアを寄越してくれたんだ」
「お祖父様って、ウマル殿の事か…なるほど嘘ではなさそうだな」
疑い続ける学友達にセイルは咄嗟に思いついた嘘で事情を説明するとアリーは納得する。
セイルの祖父ウマルは元イルシャ王国最強の騎士にして高潔な人柄だから、堅物のアリーも納得した。
「おい、アリーそんな嘘真に受けるなよ。女ッ気のないセイルを不憫に思って、ウマルの祖父さんが娼婦をあてがったんじゃないか」
しかし、平民出のパサンにはそんな嘘は通じなかった。
「高潔なウマル様が、商売女をセイルに与えるはずないじゃないか!!」
「だけど、今までなかったのに可笑しいぜ…」

リコーン、リコーン、リコーン

更に疑いを強めるパサンであったが、そこへ授業が始まるカウベルが鳴り出した。

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