PiPi's World 投稿小説

剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 7
 9
の最後へ

剣の主 9

「セイル様、疲れました少し休んで良いでしょうか」
「あっ良いよ…アルトリア。てっ寝るならベッド…」
「スースースースー」
そんな空気を感じてアルトリアはベッドの近くに座って眠り込んだ。
僕はベッドで寝てくれと言おうとしたが、既にアルトリアは眠りについてるので、そっとしておいた。
(正直言って、君とどう接すれば良いんだい…自分が勇者なんて実感できないんだよ)
寝ているアルトリアを見ながら、未だ僕は自分が勇者と実感できず悩んでいた。
(西方大陸の有名剣士の旋風のエルティアやバン・バッカーズみたいに強かったら、自信が持てるんだけどな………)
僕は海を隔てた西方の地の英雄達に思いを馳せて溜め息を吐いた。
いつも国同士で戦争ばかりしている西大陸では、この東大陸以上に“武”が重んじられる傾向にある。
ちなみに“旋風のエルティア”とは無敗無敵を誇った剣闘士奴隷で、それによって得た賞金で僅か三年の内に自分の身分を買い戻して自由民となり、西大陸最強と言われた剣士である。自由民となって以降の消息は不明だ。
そのエルティアと唯一互角と言われるのが“聖剣の勇者バン・バッカーズ”だ。彼は西大陸の更に西の海に浮かぶパラム島という剣術の盛んな島の剣士で、アルトリアの姉妹であるダモクレスの聖剣を抜いた“聖剣の勇者”なのである。
東大陸でも剣の世界に生きる者ならば、この二人の名は伝え聞いて知っている。
(ちょっと待てよ!?…て事は僕はあのバン・バッカーズと同格って事になるのか…?はぁ…ますます自分が信じられないや…)
アルトリアに目をやると、もうスヤスヤと心地良さそうに寝息を立てている。
色んな思いが頭の中に渦巻いていたが、とりあえず今日の所は早く寝るとしよう。明日から新学期だ。
僕はアルトリアに布団をかけてやるとベッドに横たわって目を閉じた…。




翌日、セイルは教師から呼び出しをくらった。
(?・・・何のようだろう?)
「良く来てくれたなセイルくん・・・実は君に残念なお知らせがある」
「ハイ!何でしょうか?」
「今度の休みの前に試験を行ったのを覚えているね?」
「ハイ!もちろんです!」
セイルたち騎士学校の生徒たちは、毎年長期休暇の前の週に試験がある。特に前回の試験は、卒業試験の予行練習を兼ねている為、特に重要な試験だった。
「実は前回の試験で、君の成績が芳しく無くてね・・・このままでは、君に卒業試験を受けさせる訳には行かない・・・それどころか、この成績では、君に退学してもらうしか無いな・・・」
「!?・・そ!そんな!?!?」
セイルにとって教師のその言葉は、信じたく無い物だった。
「一応来週再試験を行うが、ここで良い点を取れなければ、本当に退学だ!努力するように!!」
「は・・・はい・・・」
そう言うとセイルは肩を落として、職員室を後にした。
(けっけっけ〜セイル、ざまぁ〜みろ。お前が騎士になったら、僕の将来が台無しなんだよ)
そんな落ち込むセイルの後ろでは、タルテバは勝ち誇った顔で見ていた。
(さ〜てと、あとはドルフにセイルが退学になるのを報告するか、あいつも邪魔だけど大貴族の出で頭悪いから、利用したほうが良いんだよね)
そういうとタルテバはドルフの元へ向かった。


ここは騎士学校の中庭。
中央に噴水があり、周囲には木々が植えられている。
イルシャ王国は国土の大半が乾燥した砂漠地帯であり、ゆえにイルシャ人の“水”や“緑”といった物に対する憧れは強い。
それはこのような庭園の造詣にも見て取れる。
さてこの中庭、生徒達の憩いの場である反面、周囲からの死角も多く密談には持って来いの場所であった…。
「へへへ…ドルフさん、上手くいきましたよ。セイルのヤツ、来週の追試に合格しなけりゃ退学だそうです」
「そうか!セイルの野郎、ザマー見やがれってんだ!ガハハハハ…ッ!!!」
木陰で話し合っているのはタルテバとドルフだ。
「シィ〜ッ!!声が大きいです!誰に聞かれるか分かったもんじゃありません…」
「フフン…しかしタルテバ、お前も策士だなぁ。俺だったら考えも付かなかったぜ。先公に金を握らせてセイルを退学に追い込むなんてよぉ…」
「いやいや…金もさる事ながら、やっぱりドルフさんのご実家のご威光に尽きますよ。先公の野郎、初めは渋ってたんですがイシュマエル家の名前を出した途端にヘイコラし始めましてね…いや、さすが宰相や大将軍を何人も輩出なさっておられる名家は影響力がある…」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す