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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 89

にこやかながらも、アルトリアの思いっきりドスの入った質問にチンピラは怯えしまいながらも喋り出す。
「奴なら、この時間帯はあんた達の後ろにある『濁流』という酒場で酒を飲んでる筈だ。ただ、奴は情報網は凄いが、金にガメツイ奴だぜ!」
ムサルマーンがいる酒場の場所をチンピラは指を指して説明するが、その光景はアルトリアという名の蛇に睨まれた蛙みたいであった。
相当アルトリアが怖いのだろう。
「情報提供感謝する。ただ、私達は金の持ち合わせが無い。だから、少し借りるぞ」
そう言うと、アルトリアはチンピラ二人組の懐から金を奪うが、チンピラ二人組は怯えるだけでそのまま退散していった。

情報屋に提供する為にチンピラから巻き上げた金を数えるアルトリアは、すっかりビビりっているセイルにやっと気付く。
「ふむ、まあまあだな。おやセイル様、どうしましたか?」
「アッアルトリア、お金まで巻き上げるなんて、すっ少しやり過ぎだよ…騎士はそんなことをしないよ」
「先日ナシートを救う為に全財産を出して無一文に近いのは誰のせいですか、それにアリー殿の事を知るには情報屋に情報料を払わないとだめですよ」
「・・・・・・・・・・」
先日のナシートの一件、アリーの所在などを知るために情報屋に提供する金のことを指摘されアルトリアに指摘されセイルは何もいえなかった。
それでなくても、このザラーム街に来てからただビビッてるだけで何もできない自分と異なり。
アルトリアは全く動じず逆に情報を得てしまうから、自分のへたれぶりをセイルは呪うしかなかった。
「まあ、小言はこれ位にしましょう。今はアリー殿の事が心配です」
「そうだったね…まずはその濁流という酒場に行こう」
二人は、後ろのほうにある酒場『濁流』に入った。

酒場『濁流』は今にも潰れそうな建物で店のマスターは無愛想で客は如何にもガラの悪い連中ばかりであった。
その上、連中は店に入って来たセイルとアルトリアを鋭く睨んでいた。

「ア…アル…アルトリア、やっぱり一度恥を忍んで衛士府に戻って、アリーの情報を聞こうよ」
酒場の店主や客の敵意ある眼差しにセイルは泣きそうな顔で衛士府に戻ろうと言うが、アルトリアは呆れながら首を振る。
「駄目です!ここまで来たら最後まで行きますよ。毒食らわば皿まです!」
「そっそんな〜アルトリア引っ張らないでぇ〜」
アルトリアはそう言うとセイルを引っ張り、ムサルマーンを探しに辺りを見回す。
その途中、アルトリアを観たガラの悪い酔っ払い客達が、からかって声をかけて来たが、
「ヒュゥ〜♪」
「おい、美人の姉ちゃぁ〜ん、こっち来てお酌してくれッ!!!!」
「あの姉ちゃん、何者だよ…」
「解らねえ。ただ、相当の修羅場を潜ってるの確かだぜ…」
アルトリアの一睨みで彼女を観た酔っ払い客たちは黙ってしまった。

アルトリアは店内を見回すと、カウンターの端の席に座って酒を飲んでいる中年男に目を付け、つかつかと歩み寄って行った。
セイルは思う。
(あ…あの男が情報屋のムサルマーンって人なのかな…?)
アルトリアはすぐに判ったようだった。
特に他の客と何かが違うという訳でもなし…一種の勘とでも言うべき物だろうか。
というか彼女は明らかにアウトローな人々というかスラム街の住人に慣れている。
(僕の前は王宮でイルシャ・ルーナ女王に仕えていたはずの彼女が何故…?)
そんな事を考えていると店主らしき男が声を掛けて来た。
「お役人さんがこんな貧民窟の汚ぇ酒場に一体何の御用です?」
「お役人?…あぁ!」
そう言われて初めてセイルは自分が衛士の制服を着たままだった事を思い出した。
道理でザラーム街に入ってから妙に敵意の籠もった視線を受ける訳だ。
「い…いや、ちょっと私用で…」
そう言いながら彼は慌てて上着を脱いだのだった。
一方、アルトリアはムサルマーンと思しき男の隣の席に腰掛けて尋ねる。
「あなたがムサルマーンか?情報屋の…」
「ふむ…そういう風に呼ぶ者も居るなぁ」

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