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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 86

「……」
アリーは黙ってザダームを睨んでいる。
ザダームはそんなアリーの顔に唾を吐きかけて言った。
「ペッ!…そうやって黙って睨むだけか?士族風情が…悔しかったら一発でも殴り返してみやがれってんだ。まぁ、貴族の俺に士族のお前が手ぇ出したら死刑だけどねぇ〜♪」
「お前こそ…」
アリーは口を開いた。
「…貴族っていう身分を盾にして…子分を大勢連れ回して良い気になってる…一人じゃ何にも出来ない腰抜け野郎だろう…?」
「こ…この野郎…ほざいたなぁ?…決めた!!ちょっとシメてやるだけのつもりだったけど、やっぱりお前は死刑だ!」
額にピクピクと青筋を立てながらそう言うと、ザダームは腰に差していた曲短刀を抜いて構えた。
子分のチンピラ共は慌てて止めに入る。
「ちょ…ザダームさん!!」
「さすがに殺しはヤバくないっすか!?」
「うっせぇ!!貴族の俺が士族のコイツを殺っても罪には問われねえハズだ!もし何か面倒な事になってもオヤジが何とかしてくれる!!それに俺はコイツを許さねえ!!よくも馬鹿にしやがったなぁ!?俺を馬鹿にしやがったなあぁ!!?死ねえええぇぇぇぇぇっ!!!!」
ザダームは喚き散らしながらアリーに向かって曲短刀を突き出して来た!
…が、次の瞬間!

 ズドォンッ!!

アリーは懐に仕舞っていた拳銃を取り出し、何の躊躇いも無く引き金を引いたのだった!
銃は火を噴き、弾はザダームの右肩に命中し、貫通した。
「い゛ぎゃあ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁっ!!!?い゛…い゛だい゛よ゛お゛ぉぉ!!!お゛母ざあ゛ぁぁん゛!!!!」
撃たれたザダームは思いっきり泣き叫び…
 ジョロロロロロロ〜…
おまけに小便まで漏らした。
だが無理も無い。
生まれて初めて耳にする銃声、火薬の匂い、もちろん撃たれたのだって初めてなのだから…。
子分のチンピラ共も大慌て。
「ザ…ザダームさん!!?」
「テメェ!今一体何しやがったぁ!?」
「急に肩から血を噴き出して倒れたぞ!?やべぇ!!こいつ魔術師だ!に…逃げろぉ!!」
「こ…殺されるぅ〜!!!」
触れずしてザダームを傷付けたアリーを魔術師と勘違いしたチンピラ共はザダームを背負って逃げて行った。

「もっもう、王立学士院への復学はおろか、王都にはいられないな・・・・・・・」
自分の身を守るとは言え貴族しかも内務大臣の息子を銃で大怪我を負わせてしまい自分の将来が終わったと半ば放心状態のアリーは思い知らされていた。
「王都を出よう。サーラさんや兄さん達を巻き込むわけには行かない」
家族や友人に迷惑をかけない為にも、傷だらけのアリーは王都を出る事を決意し、裏路地を出ようとする。
そんな時、フードを被った太った二人組みの男がアリーに話しかけてくる。

「ぶひひひひ、さっきの出来事を見せて貰ったよ」
「なかなかの腕前なんだな。これならば役に立ちそうなんだな」
フードを被った二人組の男をサダームの仲間と疑うアリーは思わず後退り警戒する。
「あっあなた達は何者ですか、あいつらの仲間ですか?」
「あのサダームみたいなゴロツキと一緒にしては困るんだな」
「ここでは埒があかないから、ボクたちと来るんだな」
胡散臭いフードを被った謎の二人組を疑うアリーだが、サダームに大怪我を負わせた時点で逃げ場がないので仕方なく彼等に従うのを決めた。
「わっわかりました。貴方たちに付いて行きます」
しかし、この悪魔の誘いが自分の運命を大きく変えるなんて、とうのアリー本人は気付いて無かった。


翌日、衛士府に出仕したセイルは、アリーが殺人未遂罪で指名手配された事を知らされた。
「そ…そんな…!!嘘でしょう!?悪い冗談ですよね!?」
「残念ながら事実だよ、クルアーン君…」
中隊長は言った。
「ザッバーフ・アリーには、内務大臣閣下のご子息、ムスタファ・ザダーム氏を魔法を使用して殺害しようとした容疑が掛けられている」
「何かの間違いです!!僕はアリーを騎士学校時代から良く知ってます!あいつは人を殺そうとするような男じゃありません!」
「…なるほどね。君が言うんだから、まあそうなんだろうね。だがそこに恋愛という感情が絡んでいたとしたらどうかな?」
「ど…どういう事ですか…?」
「ザッバーフ・アリー容疑者はムスタファ・ザダーム氏の婚約者の女性に横恋慕して一方的に思いを寄せていたという話だ。彼女は王立学士院で容疑者と面識があったという。事件の前日、容疑者は王立学士院から素行不良を理由に退学処分を言い渡されている。恐らくその事が原因で自暴自棄となり、ムスタファ・ザダーム氏を逆恨みして犯行に及んだと考えられる…」

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