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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 81


そしてセイルは成金男に金を渡した。
それは国王から貰った報償金と彼の初任給を全部合わせてようやく足りる額だった。
しかもそのために家族のために買ったプレゼントも返品した。
「クソ!面白くないんだな〜!」
「ああいう常識知らずなヤツは馬に蹴られてくたばっちまえば良いんだな〜!」
太った双子は悪態をつきながら帰って行った。

「はぁ…」
大事に使おうと決めていた金を一気に全額使ってしまったセイル…もう溜め息しか出て来なかった。
だが、彼は後悔はしていなかった。
「ごめんね!私のために…本当にありがとう!」
肩の上に乗っかって泣きながら礼を言うフェアリー…彼女をあのヤバい双子の魔手から救う事が出来た。
セイルはそれだけで良かった。
一方、アルトリアは不満らしい。
「まったく…セイル様のお人好しにも困った物です。まあ良いでしょう。その羽虫を購入した額以上で売り飛ばせば良いだけの話ですからね」
「何言ってるんだよ、アルトリア?この子を売り飛ばすなんて…そんな事する訳ないだろう?」
「ならばどうするのです?」
セイルはフェアリーに言った。
「ほら、お前はもう自由だ。自分の家へ帰りな。もう人間に捕まるんじゃないぞ」
だがフェアリーは首を横に振る。
「ううん、私あなたと一緒に居たい。良いでしょう?」
「お前…わかった。家に来なよ」
アルトリアはフンッと鼻を鳴らして言った。
「…ま、妥当な選択でしょうな。こいつの故郷なんてどうせ西大陸でしょうし、羽虫の力では海を越えるなんて不可能でしょう。商船に紛れ込んで渡海するにしても、辿り着くまでに、また人間に捕まったり、猫やカラスに喰われるリスクを考えたら、このままセイル様のペットに収まった方が遥かに良いという訳です」
「ア…アルトリア、何もそんな言い方しなくても…」
「そうよ〜!あんたには情け心って物が無いの!?」
「うるさい!可愛げのあるヤツなら同情もしてやる。セイル様、こいつを飼うなら虫カゴ買って行きましょう。それぐらいのお金は残ってますよね?フェアリーは三日で恩を忘れる生き物ですから、逃げないように良〜く注意しとかないといけませんよ」
「そんなの要らないよ。それより君、名前は何て言うんだい?」
セイルはフェアリーに尋ねた。
「私達は固有の名前は持ってないの」
「それは不便だなぁ…よし、じゃあ僕が名前を付けてあげるよ…そうだなぁ…ファラーシャ(蝶々)なんてどうかな?」
「素敵な名前♪」
「ファラーシャですって?こんなヤツ、ヤルカト・ファラーシャ(イモムシ)で充分ですよ」
「えぇ〜?じゃあナフル(ミツバチ)は?」
「いや、どっちかっていうとゼバブ(ハエ)でしょう」
「あんた!何でさっきから害虫系推して来るのよ!?」
「害虫だろう!」
ケンカを始めるアルトリアとフェアリー、セイルは間に入ってなだめる。
「まあまあ…虫系は良くないよね。じゃあ形容詞系の名前にしようか…アンモゥール(可愛い)とか…?」
「良い!それが良い〜!」
「こいつに限ってその名前だけは絶対に有り得ません!」
「何なのよ〜あんた!?私に何か恨みでもある訳!?」
「うるさい!私はフェアリーという物が大っ嫌いなんだ。もうお前なんてナシート(小うるさい)だ!」
「ナシート(活発な)?アルトリア、それ良いじゃないか。よし!決めた。君は今日からナシートだよ」
「え…!?」
「セ…セイル様…」
セイルが妙に納得してしまった事に二人は思わず呆気に取られてしまった。
一方、当のセイルは何度もつぶやき、気に入った様子である。
「ナシートかぁ…ナシート…ナシート…うん、良い名前だ。響きも良いし…よし!おいで、ナシート。今日から君は僕らの家族だ。名付け親のアルトリアとも仲良くするんだよ」
「え…ええ、解ったわ…」
「…な〜んでこうなったかなぁ…」
そして二人と一匹は揃って家路を急いだ。

家に帰り、ナシートを買った理由をセイルは両親に説明した。
「それで、その妖精を救うと為に初任給と報奨金を全部使ったのか・・・」
怒鳴って手を上げるのを覚悟しているセイルは父オルハンに謝罪する。
「ごっごめんなさい父様」
予想と異なりオルハンは呆れるだけであった。
国王に謁見しお褒めの言葉を得たのがオルハンの怒りを緩和したようである。
「まあ、陛下に謁見しお言葉を頂いた。それだけで俺の出世にはプラスだ」
「父さま・・・」
しかし、複雑な表情のセイルは父親は出世の事しか考えてない事を改めて気づかせた。
だが、文句を言ってもオルハンは不愉快になりナシートを追い出されかねないので我慢するしかなかった。
結局この父親とは永遠に解りあえる事は不可能だとセイルは思い知らされた。

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