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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 8

「え…え〜と…彼女は…そのぉ…」
「お初にお目にかかる。私はセイル様の剣…名はアルトリアと申します」
僕が何か上手い言い訳は無いかと考えている間に自己紹介してしまうアルトリア。それを聞いたサーラさんからは笑みが漏れた。
「剣?うふふ…面白い人ですね。そう言えばアルトリアと言えばイルシャ・ルーナ女王の使っていた伝説の聖剣の精霊の名と同じではありませんか」
「同じも何も私がその聖剣の…」
「あぁ〜っ!!い…いや、彼女は…その…僕の従姉妹なんだ!」
僕は慌ててアルトリアの言葉を遮った。もし彼女が聖剣の精霊だなんて事が周囲にバレたりしたら大騒ぎだ。冗談抜きで国が動くレベルになる。
「は?従姉妹?何を仰っているのですか?セイル様…」
(いいから僕に合わせて!)
キョトンとして聞き返すアルトリアに僕は小声で訴えた。
「ええ、セイルさんの従妹アルトリアです。以後お見知りおきを」
「そうでしたか、では用事があるので失礼します」
僕の意図に気づいたアルトリアはうまく口裏を合わせてくれた。
お陰でサーラ姫は用事を思い出して去っていった。
何とか、アルトリアが聖剣の精霊と知られることは回避された。
その後、寮の自室に戻った僕とアルトリアは今後のことを話し合う事にした。

「アルトリア、君の身分をどうするかなんだけど…」
「私の身分?私はあなた様の剣です。それ以上でもそれ以下でもありません」
「いや、それはそれとしてね……とりあえず君は僕の召し使い…という事でどうかな…?」
生徒に貴族や騎士の子弟が多いこの学校では、寄宿舎に召し使いを住まわせる事が許されているのだ。アルトリアを生徒として入学させてしまう手も考えたが、身分証明が出来ない彼女は入学資格を得られないだろう。
「しかし先ほどセイル様が“姫様”と呼んでおられた娘には従姉妹として紹介されましたが…」
「あぁ、そう言えばそうだった…」
サーラさんは鋭いからなぁ…何て説明しよう…?
僕は頭を抱えて溜め息を吐いた。
「あの娘はこの国の王女なのですか?」
「…え?ああ、第21王女イルシャ・サーラ殿下だよ。本人が“姫”とか“殿下”とか嫌がるから名前で呼んでるけど…」
「…という事は先の我が主、ルーナ様の子孫ですか…なるほど、確かにどことなくルーナ様の面影が感じられました」
サーラが自分の主ルーナの末裔と知りアルトリアは納得する。
やっぱり、昔の主との思い出は深いんだな。
「しかし、あのサーラという方は腹に一物ありますね…イルシャ様は立派な方だったのに残念です」
「えっサーラさんって、悪い人じゃないよ」
「これでも私は人の本質が読めるんですがね。セイル様、くれぐれも気をつけてください」
しかし、直ぐに何時ものクールな顔になったアルトリアはサーラさんには気をつけろと忠告する。
サーラさんは悪い人じゃないと僕はいうが、余り信じていなかった。

(何だかアルトリアらしくないな・・・やっぱりサーラさんに嫉妬してるのかな?)
僕はアルトリアのその言葉が、憧れの女性であるサーラさんを不当に貶めているように感じ、少し不機嫌になる。
「・・・アルトリア。君の人を見る目を疑う訳じゃ無いけれど、サーラさんを悪く言うのは止めてくれないか?彼女は本当に素晴らしい女性なんだから・・・」
僕の言葉にアルトリアは一瞬悲しそうな表情を浮かべるが、それ以上何も言わなかった。
二人の間に少しだけ重苦しい空気が流れる。

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