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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 67

つっこむセイルをアルトリアがなだめる。
「まあまあセイル様…私達はこのお店は今日が初めて、一方アブラハム殿は既に常連…この意味、解ります?」
「いや解るけどさ…自分の食べる物くらい自分で決めさせてよ」
「いいえ、初めて来る店では先駆者に従う…これが私の“食い道”です」
「“食い道”って何だよ“食い道”って…」
呆れるセイル。
アブラハムはアルトリアの手を取って言った。
「おぉ!食い道!食事という行為を道にまで昇華させるなんて!素晴らしいですアルトリアさん!も…もし良かったら今日、退勤後、僕の家に来て食について朝まで語り合いませんか!?きっと僕ら、気が合うと思うんですぅ〜!いやほんと、衛士府の門前でばったり出会ったのも何か運命的な物感じるし…!」
(えぇ!?ま…まさかのナンパ…!?)
突然のアブラハムの行動にセイルは愕然とする。
…とはいえ焦燥や嫉妬めいた感情はまるで感じられなかった。相手が相手だからだろうか…。
案の定、アルトリアは丁重に、しかしキッパリと断る。
「お誘いは大変嬉しいのですがアブラハム殿、私セイル様のご実家に居候の身ゆえ、外泊の方はご遠慮させていただきます」
セイルはジト目でアルトリアを睨みながら思う。
(こいつ…僕の家庭を言い訳に使いやがった…まあ良いけどさ)
あるいはアルトリアが望むなら一晩くらいアブラハムの家に泊まらせてやっても良い…とセイルは思う。
アブラハムの性格から考えるに、本当に一晩中、食についての熱い議論が交わされる可能性の方が高いからだ。
(アルトリアは自分の事を僕の剣と言って僕に四六時中付き従ってるけど、普通は従者だって夜は別々だし休日ぐらいあるもんだ。彼女だって時には気の合う者同士で趣味の話に華を咲かせたりなんかして息抜きしたいはずだ…人間だもの)
セイルはパートナーを束縛するタイプではなかった。
いや、仮にアルトリアに自分の他に好きな男が出来たら、そして彼女がその男と結ばれる事を望むのなら、セイルはそれでも良いとさえ思っていた。
一見、淡白…ともすれば冷淡に思えるかも知れない。
『彼女は例え一時自分の元を離れても必ず再び戻って来てくれるはず!』という絶対的な自信とも違う。
それが相手の意思を…人格を尊重するセイルなりの愛の形だった。

「あ……そうですか……」
アルトリアにあっさり断られたアブラハムは一気に意気消沈して暗くなる。
セイルは逆に彼に同情し、つい応援したくなってしまう。
(が…がんばれアブラハム!)
一方、アルトリアはセイルの態度が不満だった。
(私が同僚にナンパされたというのに顔色ひとつ変えない…なんだか釈然としないなぁ……ハッ!いかんいかん、何を考えているのだ私は!?私はセイル様の剣ではないか!剣に私情など不要!)
慌てて首を左右に振り、己を律するアルトリア。
だが三人のテーブルには何かドンヨリとした空気が漂い始めていた…。

そこへ、ちょうど都合よく(?)料理が運ばれて来た。
「お待たせいたしましたぁ〜。こちらB定食三人前になりまぁ〜す」
「おぉ!これは美味しそうですね」
「わぁ!本当だ。良い匂〜い」
「どうだい!僕のチョイス、なかなかのもんだろう?」
食い物の力は凄い。
一気に場の空気を変える。
お腹が空いているから尚更なのかも知れない。
しかも、やって来たメニューは『山盛のポロウ(ピラフの仲間)』と『タンドリーチキンカレー』とボリューム満点で如何にも元気が出るランチであった。

「じゃあ、早速食べよう」
スプーンを持ったセイルはタンドリーチキンカレーを食べようとするが、アブラハムに注意される。
「駄目だよ!このランチの醍醐味は、こうやってカレーを全部ポロウに掛けて食べるんだよ」
アブラハムはタンドリーチキンカレーを全部ポロウの上に掛ける。
「そして!豪快に食うべし!」
そう言うと、アブラハムは一心不乱に食べ始める。
「おおッ!素晴らしい食の革命です。ではでは、私も!」
アルトリアもアブラハムを見習ってポロウの上にカレーを掛けて、一気に食い始める。
「もぐもぐ、美味い!カレーの辛味とポロウの香ばしさが渾然一体としてます!」
「でしょ!でしょ!もぐもぐ!だから、病み付きになるのですよ!」
(すっ凄い食欲・・・)
アルトリアとアブラハムの凄まじい食欲の前にセイルは黙ってみているだけであった。
そんなセイルをアルトリアは気づき注意する。
「モグモグ…モグモグ。セイル様、ボーっとしてると昼食は終わりますよ」
「冷めたら美味しさは半減だよ」
「はあ〜食べるか」
そういって、セイルもポロウにカレーをかけて食べ始めた。
「美味い。しかも、力が出そうだよ!」

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