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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 66

「え!?なになに!?」
「俺にも見せてくれよ〜!」
たちまち同僚や先輩達が集まって来た。
誰かが言う。
「これ、人相書として大量に刷って各所に張り出したらどうかな?逮捕に繋がらなくとも犯人を牽制出来るんじゃない?」
「いや…もう上に頼んでみたんだけど…」
セイルは力無く首を振った。
「そっかぁ…」
「被害者が貴族なら窃盗犯でさえ総動員して捜査に当たるのになぁ…」
「…ま、これが現実だよ。どんなに志だけ高く持っていても、上の人間が…いや、制度が壁となって立ちはだかる。どうしようもない」
アブ・シルは犯人の似顔絵をセイルに返して言った。
「もう諦めろ。少なくとも君のお陰で殺されていたはずの命が一つ救われたんだ。それで良いじゃないか…」
「…いえ、それでも僕は諦めません。僕はこの広い王都で唯一あいつの顔を知っているんです。あいつは僕が捕まえます!」
「無茶はするなよ。下手をすれば元も子も無いからな」
セイルの強い決意にアブ・シルは何を言っても無駄と悟り無茶はするなと一言だけ言う。
先輩の忠告をセイルは真摯に受け取る。
「はっはい、気をつけます」
「さてと…報告書を中隊長に出しに行くか!」
そう言うとアブ・シルは詰め所を出て行くとアブラハムがセイルに話しかける。
「セイル、美味い店を見つけたんだ。昼飯はそこへ食べに行こう〜」
「アブラハム、今はそんな気分じゃ…」
グッグウゥゥ〜
同僚の誘いを断ろうとした瞬間、セイルの腹の虫が大きく鳴り出す。
「こういう時は沢山食べて鋭気を養うのが良いんだよ!」
「わかった行くよ…」
仕方なくセイルはアブラハムと昼飯を食べる約束をする。
アブラハムは喜んでいた。
「わ〜い!やった〜!」
一方、セイルは心の中でアルトリアを問い詰めていた。
(お腹の虫の音は君だろう!アルトリア!)
『申し訳ありません。でも、アブラハム殿の言う美味しい店に興味がありまして・・・』
(前も言ったけど、騎士は自制心が必要なんだよ。それなのに君ときたら、全く………)
『私にとって食事は生きるうえで一番の楽しみなんですよ。セイル様はそれを取り上げるのですか!!!』
問い詰めるが、返って逆切れを起こすアルトリアに根負けしたセイルは仕方なく連れて行くことにした。
(解ったよ。じゃあ、昼時に上手く偶然を装って詰め所の近くで落ち合おう)
『流石は私はセイル様です!』
「ふう〜(アルトリアの大食いを治さないと・・・)」
アルトリアの大食いをなんとか直せないかと悩むセイルであった。

「ほら!ここだよ」
昼休み、セイルとアルトリアはアブラハムに案内され、件の食堂へとやって来た。
入り口には行列が出来ている。
セイルは言った。
「混んでるねぇ、もっと空いてる店にしよ…」
「「とんでもない!!」」
彼の提案はアルトリアとアブラハムにハモりながら却下された。
「えぇ〜…だってこの様子じゃあ待ち時間と食事時間で昼休み終わっちゃうじゃん…」
「セイル様は食に対する愛がありません!時間が何ですか!?」
「そうだよ!並んででも美味い物を食べる!例え午後の始業に間に合わなくとも!それが食いしん坊のポリシーだ!」
「いや知らないよ!てゆーかダメだろそれ!」
しかし結局セイルは二人の勢いに押し切られて一緒に並んでしまうのであった。

とはいえ昼時…店内の客の回転も決して遅くはない。
やがて三人は席に着けた。
「どんなのがあるのかなぁ…?」
品書きを眺めながら何を注文するか吟味し始めるセイル。
一方アルトリアはアブラハムに尋ねる。
「アブラハム殿、ズバリこの店のオススメは?」
「お任せくださいアルトリアさん…お姉さ〜ん!B定食三人前お願いしまぁ〜す!」
「ちょっ…なに僕の分まで勝手に注文してんの!?」

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