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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 65


やがて事を終えた娼婦は客と別れて一人となった。
セイルは一応事情を説明しておこうと娼婦に歩み寄り、話し掛けた。
「あの…ご苦労様です…」
「?…誰あんた?」
「実は僕、あなたのお兄さんに頼まれまして…」
ところが…
「お兄さん?何言ってんのよ。私には親兄弟なんて居ないわよ」
「……へ?」
セイルは訳が解らなかった。
これは一体どういう事なんだろう?
あの人は確かにこの人を妹だと言った。
彼は嘘を吐いていたのか?
嘘だとしたら、どうしてそんな嘘を…?
その時、アルトリアの声がした。
(…セイル様、もしかして彼が街娼殺しだったのでは…?)
「…あっ!」
そう考えると全て辻褄が合う。
セイルは全速力で先ほど男と別れた場所へと走った。
(…頼むから無事でいてくれ…思い過ごしであってくれ…!)
セイルは男と別れた場所の辺りについた瞬間。
「いっいやあぁぁ!!!助けてえぇぇ!!」
何処か近い場所で若い女性の悲鳴が聞こえた。
悲鳴を聞いた女性の居場所を瞬時にアルトリアは察知するとセイルに現場がどこか教える。
「右です!右を言ってください!セイル様!」
「うん、わかった。アルトリア」
セイルはアルトリアが指示する場所へ大急ぎで向かった。

「あぁ…っ!!?」
そこには先程の娼婦が胸から血を流して倒れていた。
「セイル様!」
「ア…アルトリア!」
アルトリアが姿を表し、ぐったりと横たわる娼婦に駆け寄ると口元に顔を近付けた。
「…まだ息がある!」
アルトリアは娼婦の胸の傷の上に両手をかざして目を閉じた。
彼女の手の内側がパァ…っと輝き始める。
治癒魔法だ。
「助かるの!?」
「一応止血をしていますが…正直この出血量では何とも言えません。それよりセイル様!ここは私に任せて犯人を探してください!おそらくまだ近くに潜んでいるはずです!」
「そ…そうだ!頼んだよ!」
セイルは犯人が逃げたであろう方へと走った。
だが一体どこへ雲隠れしたものやら、犯人は夜の闇に溶けて消えたかの如く姿を消してしまったのであった…。

「クソ…ッ!!僕は何て無力なんだ…娼婦達を守って犯人を捕まえるなんて一人で意気込んでいて…結局この様じゃないか!」
応急処置を施した娼婦を最寄りの診療所へ連れて行った帰り、セイルは悔し涙を流しながら言った。
「……」
そんな彼に対してアルトリアは、ただ無言で隣を歩いていた。
掛けるべき言葉も思い浮かばないし、むしろ中途半端な慰めの言葉など、かえってセイルを惨めな気持ちにさせるだけだと思ったからだ。

その頃、王都の一角では…
「ひい、ふう、みい……ケッ!銅貨15枚か…相変わらず街娼の稼ぎはシケてやがんなぁ…」
あの男が娼婦から奪った金の感情をしていた。
ふと彼はセイルの顔を思い出してニヤリと笑って呟く。
「ククク…とんだ甘チャンだったなぁ…」

翌日、セイルは衛士府に出仕するや否や、何やら思い詰めたような顔で中隊長の所へ向かった。
「ど…どったの…?」
「中隊長殿!暫くの間お暇をいただきたく思い、お願いに参りました」
「えぇ!?いやいやいやいや…一体何があったっていうの?病気や特別な事情でもない限り長期休暇は認められないよ?」
「なら衛士府を辞める事になっても構いません!僕にはどうしてもやらなければならない事があるんです!」
「ま…まず事情を聞かせてもらっても良いかな?」
セイルは仕事を休んで本気で街娼殺しを捕まえたいという旨を伝えた。
「…頭を冷やしなさい」
中隊長はセイルを正気ではないと取り合わなかった。

「…僕達の仕事って、一体何なんだろう…?」
悶々とした気持ちを消化しきれないまま詰め所に戻ったセイルはポツリと呟く。
それをたまたま聞いていたアブ・シルが皮肉っぽく答えてやった。
「そりゃあ貴族や金持ちが安心して暮らせる平和な都を維持する事さ。王都衛士隊の本質は国王と王家を守る軍隊なんだから。都の治安や民を守るのは派生任務だよ。元々はね」
「やっぱり衛士府にいたんじゃ、あいつは捕まえられない…」
「話は聞いたよ。犯人と会ったそうだね」
「はい…絵の上手い先輩が似顔絵を書いてくれました」
そう言ってセイルは一枚の紙を取り出してアブ・シルに見せた。
「へぇ〜!これが犯人かぁ!連続殺人鬼なんていうからどんな悪人面かと思ったら…意外と細面で気弱そうな男なんだなぁ〜」

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