PiPi's World 投稿小説

剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 62
 64
の最後へ

剣の主 64

予想外の流れにセイルも驚く。
衛士達は言った。
「ああ、俺らだって連続殺人鬼が王都内に野放しってのは正直、気持ちの良い状態じゃないしな」
「それに君見てたらなんか自分が新人だった頃の事思い出しちゃったよ。いつの間にか、つまんねえ大人になっちまってた…忘れてたよ」
「俺もなんかやる気出て来たわ。微力ながら手伝わせてくれないかな」
「み…皆さん、ありがとうございます!」

こうして、セイルの地味ながらも真摯な行動は、少しずつではあるが衛士達の意識を変えていったのである…。

そんなある晩の事。
「こんばんは、今夜も冷えますね〜」
「あら坊や、今夜も見回りご苦労様…ほんと、もうすぐ五月だってのに寒いわよねぇ〜」
セイルがいつものように顔見知りの街娼と世間話をしていた時だった。
「…ん?」
「どしたの、坊や?」
「いや、あそこに居る男の人…あんな所で何をしてるんでしょう?」
セイルの指差す先には一人の若い男の姿があった。
どうも物陰に隠れて何かを伺っているような様子だ。
「なんか怪しいな…ちょっと僕、行って確かめてみます!」
「あ!ちょっと待ってよ〜」
娼婦が止めるのも聞かず、セイルは男の元へと走った。

「ちょっとあなた!そこで何をコソコソしてるんですか!?」
「うわぁっ!?び…びっくりしたぁ!」
セイルが後ろから声を掛けると男は慌てて飛び上がった。
痩せていて、どことなく気弱そうな感じの男だった。
「驚かせてしまったのなら失礼しました。…で、何をなさっていたんです?」
「い…いやぁ、それが…そのぉ…」
なぜか口ごもる男。
これはますます怪しい。
そこへ、先程の街娼がセイルを追って来た。
「ちょっと、いきなり一人にしないでよ〜。なんか怖いじゃないの…」
「あ…ごめんなさい…」
その遣り取りを見ていた男はポンと手を叩いて言った。
「…あぁ!ひょっとして君もかい?」
「…はあ?何ですか?」
「またまた〜、隠すな隠すな♪」
男は急に人懐っこい笑みを浮かべ、肘でセイルを小突いて来た。
セイルは訳が解らない。

「…えぇ!?妹の見張りぃ!?」
男から事情を聞いたセイルは驚いた。
なんと彼は街娼である妹の見張りをしていたのだという。
男はどこか寂しげに笑いながら言った。
「そうなんだ。最近は連続街娼殺しとやらで色々物騒だろう?…ほら、あの向こうに立ってる街娼が居るだろ。あれが俺の妹なんだ」
指差された方を見ると、確かにそこには一人の街娼が立っていた。
「あ…あなた、妹さんに体を売らせてるんですか!?」
セイルの質問に男は辛そうな表情で答えた。
「…そりゃあ俺だって妹にこんな真似させたくはないよ。俺は元々ある田舎の州の太守(地方領主)に仕えていた騎士だったんだけどね、州の財政難による人員削減で騎士の地位を失ってしまったんだ。それで田舎に居るよりはと思って王都に出て来たんだけど…」
「仕官の口は見つからなかった…?」
「……」
男は黙ってコクリとうなずき、そして言った。
「…職種を選びさえしなければ仕事が無い訳じゃない。でも騎士としてのつまらないプライドが邪魔してね…騎士として産まれ、騎士として育てられ、騎士として生きてきたんだ…今さら平民がするような仕事は出来ないよ…まぁ、その挙げ句たった一人の妹に身体を売らせて何とか食いつないでるんだから、ほんと俺達って最低な人間だよなぁ…」
「そんな事は……って、ちょっと待ってくださいよ!“俺達”って…何で僕が含まれてるんですか!?」
「へ?さっきの街娼、君のお姉さんじゃないの?」
「違いますよ!知り合いですけど…」
「何だ、そうなのか…お、妹に客が付いたみたいだ」
見ると、確かに男の妹だという街娼に客と思しき男が近付いて何やら話している。
「本当だ。それじゃあ僕はこれで…」
セイルは立ち去ろうとした。
すると男は一瞬の逡巡の後、セイルの服の裾を掴んで言った。
「ちょ…ちょっと待ってくれ!頼みがあるんだけど、良いかな?」
「な…何ですか?」
「君、良かったら俺の妹を見張ってくれないか?代わりに俺が君の知り合いを見張るからさ…!」
「どうしてそんな事を…?」
男は言った。
「いや、実はね…いくら生きるためとはいえ、自分の妹が見ず知らずの男に抱かれてる所を見なきゃいけないっていうのは兄として凄く辛いんだ…頼む!この通りだ!」
男の瞳には涙が浮かんでいる。そうまでされてはセイルには断る事など出来なかった。
「…わかりました。引き受けますよ。それじゃあ彼女の事をよろしくお願いしますね」
「…おぉ!ありがとう!本当にありがとう!」

そしてセイルは男の妹を見張る事になった。
だが、見張るという事は、つまり行為を覗き見るという事で…。

「…ア!アン!アァン!良い!気持ちいい!もっと…もっと激しく犯してぇ〜!」
(うぅ…僕は一体何をしてるんだろう…これじゃあただのデバガメじゃないか…)
物陰に客を引き込んで一戦交えている娼婦を、さらに物陰から見守るセイル…どう見ても覗き魔である。
(…でも確かに自分の身内のこんな姿を見てなきゃいけないなんて、なかなか辛い物があるよな…)
セイルに姉妹はいないが、自分の身近な女性…つまり母ヤスミーンや祖父ウマルの家で働く幼馴染の侍女ミレルなどが、見ず知らずの男と望まない性交をする場面を想像しかけ、慌てて頭を振って妄想を打ち消した。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す