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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 62

「あぁ、構わぬ。気にするでない。それよりオルハンは元気でやっておるか?いずれは近衛隊幹部も夢では無いと皆噂しておるぞ?もしそうなれば士族階級では初の快挙じゃな…ハッハッハッ!」
総監は上級貴族の出身、能力というより家柄によって選ばれた人物だった。
いずれは更に上の地位に就く身である。
「あ…ありがとうございます、父は元気でおります。それよりも今日は別なお願い事があって参りまして…」
「ほ?何じゃ、申してみよ」
「はい、実は近ごろ巷で噂になっている街娼婦連続殺害事件について…」
セイルは事の次第を話し、総監に訴えた。

…我々衛士の使命は王都の治安を守り、人々が安心して日々を暮らしていける街にする事です。
それが、いくら遺族の訴えが無いからといって七人もの命を奪った凶悪殺人犯を野放しにしておくなんて、こんな事が許されていて良いはずが無いではありませんか。
どうか総監閣下のご判断で事件の捜査を命令してください…。

まあ早い話、融通を利かせてください…という事である。
主張は正しいのだ。
だが総監は微妙な顔で言った。
「…嫌な事件じゃったのう…犯人がまだ捕まっておらんのであろう?」
「いや、なんで過去形なんですか!現在進行形で人が殺されてるんですよ!?総監閣下が一言おっしゃってくだされば、僕達は…!」
「いやいや、それがのう…なかなか難しいんじゃ…色々あってのう…」
「色々って何ですか?」
「色々は色々じゃ。察するがよい」
「いや解りませんから!」

総監にとって衛士府トップの地位は、更に上に行くための通過点の一つに過ぎなかった。
だから自覚も責任感も薄いし、いまいち職務に身も入らない。
本気で王都の治安を良くしようなどとは考えない。
それよりも来たるべき政界入りに向け、今から活動資金を稼がねばならない。
そっちの方にご執心だった。
それに、あまり目立つような真似はしたくはなかった。
高級貴族である自分は波風立てず無難にやってさえいれば出世は約束されている。
なんでたかが街娼なんぞのために上から睨まれる危険を冒してまで自分がそんな事をしてやらねばならないのだ。
とっ総監は思っていた。
それでも、総監がセイルと面会したのはオルハンの顔を立てるためであった。
しかも、素直に引き下がらないセイルの態度に総監は次第に不愉快な表情になる。
「捕まえなかったら如何するのだ?下手をすれば、わしは失脚じゃ!その責任は君がとってくれるのか!」
「しっしかし、この様な悪事を見過ごせば後々、取り返しのつかない事が・・・」
セイルは諦めず総監を説得しようとするが、総監にはしつこいと受け止められ遂に怒り出し。
「取り返しのつかない事!それは何時起きるのだ!不愉快じゃ!退がれ!退がれ!」
「おっお待ちください!閣下!閣下!」
それでも、セイルは総監に嘆願をしようとするが、あっと言う間に部屋を追い出された。
そのまま、セイルは静かに第三中隊の詰め所に戻ったのはいうまでもなかった。

詰め所に戻ったセイルはアブ・シルや中隊長に直談判は失敗にした事を話した。
「やっぱり、直談判は駄目だったんだね」
「はい…ぜんぜん取り合って貰いませんでした」
意気消沈するセイルに中隊長は自重しろと厳しく注意する。
「まあ、追い出された程度で良かったですよ。下手したらクルアーン君は総監によって衛士を首にされてましたよ。そうならなかったのは御父上オルハン殿への配慮でしょう。今後は自重しなさい良いですね!」
この中隊長に苦言にセイルはというと。
「……はい、出過ぎた真似をしました。申し訳ありません…」
しおらしく自分の過ちを認めるセイル。
とはいえ彼は諦めた訳ではなかった…。


その日の夜、クルアーン邸…
「おやすみなさい、父様、母様」
「うむ」
「おやすみなさい、セイルちゃん♪」
消灯の刻となり、召使い達が各部屋や廊下の燭台の火を消して回る。
屋敷全体が眠りに就こうとしている時間帯、自室に戻ったセイルは何故か外出着に着替え、腰からは聖剣を下げた。
「セイル様、まさかお一人で犯人を捕まえようだなんてお考えではないでしょうね?」
アルトリアが尋ねると、セイルは当然といったように答える。
「その“まさか”だよ。もう衛士府は当てにならない。僕自身の手で事件を解決してみせる!父様と母様には内緒だよ?バレたら絶対反対するだろうからね」
「…まぁ、止めはしませんよ。それで、どうやって犯人を捕まえるつもりです?」
「犯人は街娼を狙う。なら街娼達が多く集まる場所で張っていればきっと現れるはずだよ」

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